JH803 Sofa | ソファ


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1970
Material: Stainless steel, Beech, Leather
Size: W218 × D80 × H73 × SH43 cm


Story

JH803ソファは、ハンス・J・ウェグナーが伝統的な木工から一歩進み、スチールを主要素材に取り入れた希少なシリーズに属する作品です。ヨハネス・ハンセン工房によって1970年代に製造されたこのソファは、同時期に展開されたアームチェアJH802とともに、後にCH100シリーズとして再生産される基盤を築きました。

このモデルの特徴は、ステンレススチールのフラットバーによって構成される支持フレームにあります。脚からアームの前端まで一体的に連続するスチールフレームは、直線的で力強いシルエットを描きつつ、空間に軽快さと洗練された印象を与えます。従来の木製フレームが持つ重厚感を排し、グラフィカルな表現を強調することで、国際的なモダンインテリアに適合する造形を実現しました。

一方で、内部には無垢のビーチ材フレームが組み込まれ、クッションを支える役割を果たしています。外部のスチール構造と内部の木工技術が融合することで、ウェグナーの根底にある職人技への敬意が表現されているのです。張地には高品質なレザーが用いられ、フォームコアとダウンを組み合わせた積層構造により、外観のシャープさに反して高い快適性を備えています。

デザイン年代については、1958年に初期コンセプトが存在していたとされる説と、1970年に完成したとする説があり、研究者の間でも議論が続いています。いずれにしても、このソファはウェグナーのキャリアにおける過渡期を象徴する存在であり、木工と金属という異なる素材世界を横断する挑戦的な作品として位置づけられます。

2008年にはカール・ハンセン&サンによってCH103の名で復刻され、創立100周年を記念するシリーズの一部として再び評価を集めました。オリジナルが持つ構造的誠実さと美的軽快さは現代の製造技術によって再現され、今日においてもデンマークモダンの重要なデザイン遺産として受け継がれています。

 

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