KK41181 Sofa | ソファ(ハイサイド・3人掛け)


About

Designer: Kaare Klint(コーア・クリント)
Manufacturer: Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン) / Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1930
Material: Oak, Mahogany, Leather
Size: W200 × D80 × H86 cm


Story

KK41181ソファ(ハイサイド・3人掛け)は、1930年にデンマークの建築家・家具デザイナーであるコーア・クリントによって設計されました。クリントはデンマーク・モダンデザインの父と呼ばれ、機能主義(ファンクショナリズム)と人間工学を融合させた家具設計の理論を確立した人物です。この作品は、当時のデンマーク首相トーヴァル・スタウニングの官邸オフィスのために特別に制作され、デンマーク国家の公式空間において「機能に基づく美学」が採用された象徴的な事例となりました。

高く直立した側板(ハイサイド)は、着座時に身体を包み込む安定感を生み出しながら、空間内における視覚的な秩序と威厳を保ちます。この構造は、形式と機能の調和を目指すクリントの哲学を明確に表現しています。また、3つに分割された座面とそれを支えるクロスバー構造は、立ち上がりやすさを考慮した人間工学的設計に基づいており、動的な使用環境に対応する実用的な工夫が見られます。

素材には、ルド・ラスムッセン工房によって厳選されたマホガニーやオークが使用され、表面には上質なレザーが張り込まれました。これらの素材は、耐久性と経年変化の美しさを兼ね備えており、クリントが提唱した「素材の正直さ(Material Honesty)」の理念を体現しています。伝統的な指物技術を受け継ぐ職人による精緻な接合は、構造そのものがデザインとして可視化されることを意図しており、理論と手仕事の融合がここに結実しています。

このソファは、1937年のコペンハーゲン指物師組合展で高い評価を受け、デンマーク・モダンの確立において重要な役割を果たしました。その後、ルド・ラスムッセンの工房で少量生産が続けられ、2011年の工房閉鎖後はカール・ハンセン&サンが製造を継承しています。現代の製造では効率化が図られながらも、クリントのオリジナル設計理念と高品質な素材選定が忠実に守られています。

KK41181は、単なるクラシカルなソファではなく、デンマーク・モダンデザインが国家的・文化的理念として確立されていく過程を示す歴史的な証拠でもあります。その構造、比例、素材、そして思想のすべてが、コーア・クリントの哲学「形式は機能に従う」を静かに語り続けています。

 

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