Story
ミカエル・ラーセン工房(A/S Mikael Larsen)は、1928年に創業されたデンマークの家具工房です。創業者ミカエル・ラーセンは「彫刻家(carver)」としての素養を持ち、木材彫刻と家具製作を融合させた独自のスタイルで知られました。
工房は創業当初から小規模ながら精緻な職人技を守り抜き、「ファーストクラス」の品質を追求する哲学を掲げました。オークやチークといった良質な木材を用い、花や蔦をモチーフとした彫刻を施すことで、芸術的な家具を世に送り出しました。
1940年代には若きハンス・J・ウェグナーと協業し、ロッキングチェア ML-33 を含む数々の家具を製作しました。これらは彫刻的装飾を備えつつ、同時に機能的な美を追求する作品群であり、工房とデザイナー双方の強みを結集した成果でした。
その後も小規模な生産体制を維持しながら、時代に流されない職人の家具づくりを続け、デンマーク家具史において独自の存在感を示しました。
About
Year:1928–不詳
President:Mikael Larsen
Designer:Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Place:オーフス
History
1928 ミカエル・ラーセンがオーフスに工房を設立
1929 「彫刻家」としての背景を生かした装飾的家具を製作開始
1930 オークやチークを用いた伝統的なキャビネットやチェアを生産
1932 花や葉をモチーフとした彫刻技術を家具に応用し、独自の作風を確立
1935 デンマーク国内の富裕層に向けた受注家具を製作
1937 オーフス市内で開催された展示会に出品し、地域での評価を獲得
1940 若きハンス・J・ウェグナーと出会い、協業を開始
1942 ロッキングチェア ML-33 を製作、蔦模様の彫刻が特徴となる
1942 同年、ダイニングチェアやテーブルなど MLシリーズを発表
1943 ウェグナーが独立設計事務所を開設するも、工房との協業は継続
1944 ウェグナーがFDBとJ16を発表し、ラーセン工房は手工芸的家具に注力
1945 戦後の混乱期に少量生産を続け、国内販売を中心に展開
1947 アームチェアやキャビネットなどを製作し、彫刻的ディテールを継承
1949 デンマーク家具の黄金期に入り、モダニズム潮流の中で装飾性を保つ
1950 オーフス市内の住宅プロジェクト向けに家具を納入
1952 ミカエル・ラーセンの工房が「芸術的工芸家具工房」として評価される
1955 工房規模を縮小しつつ、限定的に家具を生産
1960 職人の後継者不足により徐々に活動を縮小
1965 生産は減少するが、過去の作品はコレクター市場で評価され始める
1970年代 現存作品が「初期ウェグナー作品の製造工房」として再評価される
Furniture
・Rocking Chair ML-33 | ロッキングチェア
・Dining Chair ML series
・Dining Table ML series
・Armchair ML series
・Sideboard ML series
Imprint/Label
・工房名「Mikael Larsen」の刻印がフレームや裏面に焼印される場合がある
・初期作品では焼印が少なく、製造年や職人により差異が見られる
・一部の作品には手彫りによる模様や職人サインが確認されている
・後年の作品ではより明確な刻印が施され、識別が容易になった