MK52 Two-Seater Sofa | ツーシーターソファ


About

Designer: Mogens Koch(モーエンス・コッホ)
Manufacturer: Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン)
Year: 1936
Material: Cuban mahogany, Leather
Size: W128 × D66 × H75 cm


Story

MK52 Two-Seater Sofaは、デンマークの建築家モーエンス・コッホが1936年に設計し、1950年代にルド・ラスムッセンによって製造された作品です。このソファは、デンマーク機能主義(Funkis)の理念を最も純粋な形で体現した代表的な例として位置づけられています。

コッホはカアレ・クリントの助手として王立デンマーク美術アカデミーで教育を受け、歴史的様式の合理性を再解釈する手法を学びました。その影響のもとで生まれたMK52は、過度な装飾を排しながらも美しさを犠牲にしない、建築的な家具設計の理想を追求しています。素材には最高級のキューバン・マホガニーが選ばれ、堅牢でありながら軽やかな印象を与える構造が特徴です。

MK52のデザインは「視覚的な接合」を意図しており、座面と木製フレームの結合部をあえて露出させることで、構造の論理性を正直に表現しています。フレームの軽快さとレザー張りの柔らかさが対比的に調和し、静謐な存在感をもつソファとして仕上げられました。高さ75cm、幅128cmという控えめなプロポーションは、人間工学的配慮と都市住宅への適応性を両立しています。

このソファに採用されたオリーブグリーンのレザーで覆われた鋲は、ルド・ラスムッセンによる熟練した職人技の象徴です。機能的でありながら装飾的役割も果たし、構造の正直さを視覚的な美へと昇華させています。コッホがラタンやベニヤを避け、堅木による固定構造を採用したのは、工業生産よりも長寿命と質感を重んじた職人文化の継承によるものでした。

MK52は当時の製造体制においても特筆すべき位置を占めています。主にルド・ラスムッセンによって製造されましたが、一部はフレゼリクスベアの職人工房イヴァン・シュレクターでも生産され、厳格な品質基準のもとで多層的な製造ネットワークが築かれました。この体制は、デザイナーと工房の信頼関係に支えられたデンマーク家具文化の成熟を示すものです。

MK52は、デンマークの社会民主主義的理念に基づく「機能主義の美」を体現した永続的な作品です。その後、ルド・ラスムッセンの技術はカール・ハンセン&サンに継承され、今日でもこのデザインは高い評価を受け続けています。構造の正直さ、素材への敬意、そして時代を超えて美しく機能する姿が、コッホの設計哲学の不変性を物語っています。

 

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