ML42 Stool | スツール


About

Designer: Mogens Lassen(モーエンス・ラッセン)
Manufacturer: Søborg Møbelfabrik(ソボー・モブラー)
Year: 1942
Material: Solid Mahogany / Teak / Elm
Size: W55 × D40 × H48 cm


Story

モーエンス・ラッセンはデンマーク機能主義の先駆者として知られ、建築と家具デザインを一体の表現として追求したデザイナーです。彼の代表作のひとつであるML42スツールは、1942年に開催されたコペンハーゲン家具職人ギルド展のために制作されました。機能主義的理念を根幹に持ちながら、伝統的な木工技術の復興と素材の誠実な扱いが融合した作品として高く評価されています。

このスツールは、靴職人が使用していた作業用スツールから着想を得ています。彫刻的な座面は、人間の体に自然に沿うように深く削り出され、有機的なフォルムと高い快適性を両立させています。座面の凹みは視覚的な美しさだけでなく、安定した姿勢を支える構造的要素としても機能しています。素材にはソリッド・マホガニーやチーク、ニレといった高級無垢材が用いられ、木目の流れが曲線に沿って浮かび上がることで、彫刻的な印象をさらに強調しています。

構造面では、三本脚(トライポッド)形式を採用し、床面の不均一にも対応する安定性を実現しました。脚は下部に向かって優美に絞られ、全体として軽快で洗練された印象を与えます。接合部には手作業で削り出した木製ピンが用いられ、金属を極力使わない伝統的な構造美を体現しています。この精緻な構造は、デンマークの熟練職人による高度な技術の証でもあります。

ML42スツールの初期製造は、Snedkermester(家具職人)K. Thomsenによって行われ、Søborg Møbelfabrikはデザイン発表の協働工房として関わりました。戦時下の1940年代という困難な状況にあっても、職人とデザイナーが協働し、無垢材による高品質な家具を生み出そうとする文化的意志が、この作品に結実しています。

現在ではAudo Copenhagen(旧by Lassen)がデザイン権を継承し、オークやブナ材を使用した現代版を製造しています。オリジナルが持つ有機的な造形と人間工学的快適性はそのままに、バースツールなど現代の生活様式に合わせた新たな展開が行われています。ML42は、機能主義とクラフトマンシップの融合を象徴する普遍的なデザインとして、今なお世界中で高い評価を受け続けています。

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