About
Designer: Arne Vodder(アルネ・ヴォッダー)
Manufacturer: Sibast Furniture(シバスト・ファニチャー)
Year:
Material: Teak / Rosewood
Size: W 178–267 × D 106 × H 72.5 cm
Story
アルネ・ヴォッダーによって設計され、シバスト・ファニチャーが製造した Model 227 伸張式ダイニングテーブルは、1950年代から1960年代のデンマーク・モダニズムを象徴する代表的なテーブルです。単なる機能的な伸張機構を備えた家具に留まらず、エッジの造形や全体のバランスにおいて彫刻的な完成度を実現しています。ヴォッダーの洗練されたデザイン思想と、シバスト社の精緻な木工技術が高度に結びつくことで、工芸品としても評価される水準に到達しました。
このテーブルのデザインは、限られた空間で多様な生活様式に対応するために設計されました。Model 227 は、日常使いのコンパクトな形から、両側のドロップリーフを展開した楕円形、さらに中央の伸張板を追加した大型の長方形まで、4段階以上のサイズ調整が可能です。特にローズウッドモデルでは、最大267 cmにまで拡張でき、テレスコープホルダーと真鍮製ハンガーを組み合わせた複合伸張機構が採用されています。この構造は、動作の滑らかさと安定性、そして高い耐久性を兼ね備えています。
天板と幕板の接合部には、高い剛性を確保するための構造的配慮が見られます。幕板高さは約60 cmに設計され、座った際に脚の空間を十分に確保しながら、テーブル全体のねじれや変形を防止しています。さらに、脚部は先細りのテーパー形状で、全体に軽やかさと緊張感を与えています。ヴォッダーが得意としたオーガニックなラインが、構造の中に一体化されている点も特徴的です。
素材には、チーク材とローズウッドという当時の最高級材が用いられました。ローズウッドモデルは輸出市場、特にアメリカやイギリス向けの高級仕様として製造され、チークモデルは1960年代の商業的成功を象徴するモデルとなりました。どちらの素材も、シバスト社による緻密な突き板選定と仕上げ工程によって、天板と伸張板の木目が自然に連続するよう仕上げられています。この視覚的な一体感こそ、同社の高い職人技術を物語る要素です。
Model 227 の価値は、そのデザインと構造の完成度にとどまりません。ヴォッダーが追求した「控えめなエレガンス」は、ホワイトハウスや国連施設など世界の公的機関でも採用される品質基準を満たしており、デンマーク家具輸出時代における成功を象徴しています。現在でもシバスト社は、ヴォッダー作品の復刻を通じてその哲学を継承しており、Model 227 は機能と美の融合を体現する永続的なデザインとして評価され続けています。