About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィット & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1956
Material: Teak
Size: W125 × D125 × H73 cm(Extended: W182 cm)
Story
Model 311伸長式ダイニングテーブルは、1950年代にピーター・ヴィットとオルラ・モルガード=ニールセンによって設計され、ソボー・モブラーによって製造されました。デンマーク・モダニズムの黄金期を代表する作品であり、伝統的な職人技と産業的生産の理想的な融合を示す象徴的な存在です。
設計の焦点は、重厚なチーク無垢材を用いながらも、視覚的には軽やかに見せる点にあります。天板の裏面を面取りすることで、厚みを感じさせず、まるで天板が脚部の上に浮かんでいるかのような効果を生み出しています。この「浮遊感」は、Hvidt & Mølgaardが追求した建築的な明快さと軽快な美学を具現化しています。
テーブルは円形から楕円形へと伸長する構造を持ち、空間効率に優れています。通常時は家庭的な円形テーブルとして、伸長時には6人以上を収容できる長円形テーブルとして機能します。この変形構造は、天板と脚部の幾何学的な整合性を保ちつつ、滑らかに変化することが特徴です。戦後の都市住宅事情に適応した、柔軟で合理的な設計思想がそこに現れています。
Model 311は、無垢チーク材の特性を最大限に活かし、耐久性と構造の安定性を両立しています。脚部は楕円断面を持つ挽物加工で仕上げられ、テーパーをかけることで、全体の軽快な印象を保ちながらも堅牢さを確保しています。特筆すべきは、金属部品を一切使用しない「オールウッド・スライド機構」です。湿度による膨張収縮を考慮した精密な木製ガイドによって、数十年にわたり滑らかな可動を維持します。
ソボー・モブラーは、無垢材加工と接合技術において高い精度を誇る工房でした。その技術があってこそ、Hvidt & Mølgaardの建築的構造美が家具として実現されたのです。両者の協働は、デンマーク家具が世界市場で「品質」と「誠実さ」の代名詞となる基盤を築きました。
今日でもModel 311は、チーク無垢材の深い色合いと優雅な構造の調和によって、デンマーク・モダンの理想を象徴する作品として高く評価されています。単なる機能家具を超え、建築的思考と素材の誠実さが融合した芸術的なプロダクトといえるでしょう。