Model 65 Armchair | アームチェア


About

Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller(J.L.モラー)
Year: 1968
Material: Oak, Teak, Walnut, Paper cord
Size: W55 × D52 × H79 × SH44 × AH71 cm


Story

1968年に発表されたModel 65アームチェアは、ニールス・オットー・モラーが自身の工房であるJ.L.モラー社を創設してから四半世紀を経て到達した、技術と美学の統合点といえる作品です。デンマーク・モダニズムの成熟期に生まれたこの椅子は、軽快さと堅牢さという一見相反する要素を、極めて高い木工技術によって調和させた傑作として知られています。

モラーはキャビネットメーカーとしての訓練を受けた後、1944年にオーフスでJ.L.モラー社を設立しました。流れ作業を採用せず、全工程を職人の手によって完結させる生産方式を堅持した同社は、量産を拒みながらも国際的な成功を収めました。その哲学の核心にあるのは「二番目に良いものは存在しない」という信念であり、Model 65はその徹底した品質追求の象徴といえます。

背からアームにかけての一体的な曲線は、使用者の姿勢に自然に沿うよう設計されており、人間工学的な快適さを備えています。視覚的には非常に軽やかでありながら、内部構造には「インターロッキング・ダボ&テノン接合」という複雑な木組みが施され、長年の使用にも耐える強度を実現しています。

シートにはデンマーク製ペーパーコードが採用されており、一本の連続したコード(約130メートル)を手作業で編み上げるという精緻な工程が施されています。この伝統技法によって、均一な張力と優れた耐久性が確保され、座面は数十年単位で使用可能とされています。

Model 65はまた、デンマーク女王によって王室ヨット「Kongeskibet」に採用されたことでも知られています。これは構造的信頼性と美的完成度が国家的な水準で認められた証であり、デンマーク・デザインの理想を体現する存在として国際的評価を確立しました。現在もJ.L.モラー社では手磨きによる仕上げが続けられ、創業以来の哲学が三世代にわたって継承されています。

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