Model122 Chair | チェア


About

Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1952
Material: Beech / Oak / Teak, Plywood
Size: W49 × D48 × H80 × SH45 cm


Story

1952年、ボーエ・モーエンセンがソボー・モブラーのためにデザインしたModel122チェアは、デンマーク・モダンデザインの中核をなす「民主的デザイン(デモクラティック・デザイン)」の理想を体現した作品です。この椅子は、職人技と工業化という二つの価値観を調和させ、量産化と高品質という相反する要素の共存を実現しています。

背もたれと座面には成形合板が用いられ、滑らかで有機的なカーブを描きながらも、フレームは無垢材による頑丈な構造で支えられています。伝統的な「ほぞ継ぎ」技法によって接合された脚部は、日常使用に耐える強度を誇りながら、軽やかで明快な構成を実現しています。これにより、柔らかな曲線と直線の対比が生み出す視覚的リズムが、モーエンセンらしい実直な美しさを際立たせています。

このモデルは、彼の代表作であるJ39「ピープルズチェア」の進化形といえる存在です。J39がシェーカー家具に着想を得た手工芸的な構造を持つのに対し、Model122は成形合板の導入により、より効率的な生産と現代的なフォルムを追求しました。そのデザインは、単なる後継ではなく、時代の要請に応じて変化するデモクラティック・デザインの実験的成果でした。

ソボー・モブラーの職人たちは、モーエンセンの理念を忠実に形にしつつ、精密な製作技術によって高い完成度を実現しました。工房の創業以来の職人気質が、戦後デンマーク家具の質的基盤を支え、このModel122においてもその伝統は明確に受け継がれています。現在では、シンプルかつ永続的な造形美が再評価され、デンマーク家具史の中でも重要な転換点として位置づけられています。

Model122は、無駄を排した構造と素材の誠実な使い方、そして人間工学に基づく快適さの三位一体によって、時代を超えて評価される一脚です。質素でありながら上質、控えめでありながら堂々とした佇まいは、ボーエ・モーエンセンの設計哲学の核心そのものです。

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