Model157 Chair | チェア


About

Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1950
Material: Solid Teak, Paper Cord
Size: W50 × D40 × H77 × SH45 cm


Story

ボーエ・モーエンセンが1950年に<a href=”https://denmark-design.com/soborg-mobler/”>ソボー・モブラー</a>のために設計した「モデル157チェア」は、彼の機能主義的理念が最も純粋な形で具現化された一脚です。FDBモブラーのデザイン責任者を退任し、独立して間もない時期に制作された本作は、モーエンセンの設計哲学における転換点を示す作品であり、機能性・耐久性・普遍的な美しさという三原則を完璧に体現しています。

直線的で簡潔なフレーム構成は、コーア・クリントに師事したモーエンセンが学んだ「構造の正直さ」と「人間工学に基づく寸法原理」を忠実に受け継いでいます。高さ77cm、幅50cmという均整の取れたプロポーションは、日常の使用における快適性を最大化するために計算されたものです。装飾を一切排し、素材そのものの質感と構造の美を際立たせる姿勢は、デンマーク・モダンの理念そのものを象徴しています。

フレームには堅牢で温かみのある無垢チーク材が用いられ、接合には高精度のホゾ継ぎ(Mortise and Tenon)が採用されています。この伝統的な木工技法によって、軽やかな造形と驚異的な強度が両立され、長年の使用にも耐えうる安定性を実現しています。脚部や背もたれの直線的な構成は、視覚的な軽快さと同時に、製造効率を高める合理性も備えています。

座面にはペーパーコードが使用され、しなやかに身体の形に馴染む柔軟性と優れた通気性を備えています。ペーパーコードは戦後デンマークでラタンや革の代替素材として発展したものであり、手編みによる温かみと実用的な耐久性を両立します。これにより、モデル157は木工とクラフトの理想的な融合を体現する椅子として完成しました。

製造を担ったソボー・モブラーは、精密な木工と誠実な仕事ぶりで知られる老舗工房です。彼らの高い技術水準があってこそ、モーエンセンの厳格な設計が具現化されました。両者の協働は単なる製造委託ではなく、デザインとクラフトマンシップの信頼に基づいた理想的なパートナーシップでした。

モデル157チェアは、今日においてもその構造的完成度と美的純度ゆえに高く評価され続けています。機能主義の原点に立ち返り、人間に奉仕する家具をつくるというモーエンセンの理念を、これほど明確に示す作品は他に多くありません。この椅子は、デンマーク・モダンの黄金期における理性と詩情の均衡を象徴する、永続的なデザインの証です。

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