About
Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1953
Material: Teak, Oak
Size: W100 × D46 × H122 cm
Story
ボーエ・モーエンセンがソボー・モブラーのためにデザインしたチーク材のセクレタリーデスクは、彼の設計哲学を象徴する一脚です。戦後のデンマークで住宅の小型化が進む中、モーエンセンは「人に奉仕する家具」を追求し、限られた空間でも機能的に使える多用途デザインを模索しました。このデスクは、収納と作業という二つの要素を融合させた実用主義の結晶です。
折りたたみ式の天板を備え、閉じればコンパクトなキャビネットとして、開けば安定したワークスペースとして利用できます。天板を支えるスライド式の支持材は、木製機構として極めて信頼性が高く、使い手の手の動きに応じて滑らかに動作します。これは、モーエンセンが「家具を使う人間の行為」を徹底的に観察して設計していたことの証です。
素材には上質なチーク材が用いられ、前面の突板には木目が連続するように配置される「ブックマッチ」技法が採用されています。引き出しの四隅は蟻組接ぎによって堅牢に仕上げられ、取っ手もチーク無垢材から削り出された彫刻的なフォルムを持ちます。こうした細部の手仕事は、ソボー・モブラーの熟練した職人技を物語ります。
本体のチークに対して脚部にはオークやバーチ無垢材が使われ、素材の対比が軽やかな印象を与えています。加えて、一部モデルでは脚先に真鍮製ソックスが施され、保護と装飾を兼ねています。このような意匠は、モーエンセンがシェーカー家具に学んだ「簡素の中の誠実な美しさ」を継承するものでした。
1953年に発表されたこのデスクは、モーエンセンがFDBを離れた後の新しい創造期を象徴する作品です。民主的デザインの理念を維持しながらも、高級素材と精緻な木工によって「生活のための美」を実現しました。デンマーク・モダンが世界市場で評価される礎となったこのデスクは、今なおその普遍的な魅力を放ち続けています。