Niels Clausen | ニールス・クラウセン


Story

ニールス・クラウセンは、デンマーク・モダンの黄金期において、しばしば見落とされがちな存在ですが、その役割は極めて重要でした。彼は単なる家具職人ではなく、自身の名を冠した工房「NC Møbler」を通じて、高品質な収納家具の数々を世に送り出しました。

クラウセンについての伝記的情報は多く残されていません。しかし、その匿名性こそが彼の本質を示しています。彼の人物像は工房の作品そのものに刻まれており、彫刻的なハンドルや堅牢な構造といった特徴が、クラウセンの思想と職人魂を代弁しています。

NC Møblerは特にローズウッドやチークを用いたサイドボードやチェストを得意とし、精密な接合技術や突板の美しさによって評価を得ました。これらの家具は今日でも高い評価を受け、数十年を経てもなおその価値を保ち続けています。

また、クラウセンはアルネ・ヴォッダーやヘンリー・ローゼングレン・ハンセンといった著名デザイナーとの協業を通じて、デンマーク家具の国際的な評価を支えました。作品の帰属がしばしば曖昧に扱われるのは、彼が製造者であると同時にデザイナーであったこと、そして工房が協働の場であったことを物語っています。

クラウセンの遺産は、個人の名声に依存するのではなく、工房の美学と職人技によって築かれました。彼はまさに「静かなる巨匠」として、デンマーク・モダンの厚みを支える重要な一員だったのです。


About

Year: 1950s–1970s
Place: Odense(オーデンセ)
Manufacturer: NC Møbler(エヌシー・モブラー)


History

1950s: ニールス・クラウセンがオーデンセにNC Møblerを設立
1950s: ローズウッドやチークを用いた収納家具の製造を開始
1960s: 彫刻的なハンドルを特徴とするチェストやキャビネットを発表
1960s: アルネ・ヴォッダーやヘンリー・ローゼングレン・ハンセンのデザインを製造
1960s: 「スカラップ」や「スイーピングカーブ」と呼ばれる独自のハンドル意匠を開発
1962: ヴォッダーとの協業が始まり、ラッカー塗装と木材を組み合わせた作品を製作
1960s: サイドボードやキャビネットがデンマーク国内外で高い評価を獲得
1970s: 工房の活動が縮小し、生産量が限定されていく
2000s: ヴィンテージ市場でNC Møbler製の家具が再評価され始める
現在: クラウセンの作品は「高品質で希少」として世界中のコレクターに求められている


Furniture

・Chest of Drawers | チェスト
・Tallboy | トールボーイ
・Nightstand | ナイトスタンド
・Sideboard | サイドボード
・Cabinet | キャビネット
・Vanity | 化粧台
・Desk | デスク
・Mirror | ミラー
・Commode | コモード
・Rosewood Chest | ローズウッド製チェスト
・Teak Chest | チーク製チェスト
・Scallop Handle Chest | スカラップ取っ手付きチェスト
・Sweeping Curve Handle Chest | スイーピングカーブ取っ手付きチェスト
・Small Chest | 小型チェスト
・Entrance Set | エントランスセット
・Rosewood Vanity Set | ローズウッド製化粧台セット
・Teak Sideboard | チーク製サイドボード
・Oak Chest | オーク製チェスト
・Rosewood Mirror | ローズウッド製ミラー
・Floating Top Desk | フローティングトップデスク

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