Niels Otto Møller | ニールス・オットー・モラー


Story

ニールス・オットー・モラーは、デンマーク・モダンデザインにおいて「静かなる巨匠」として知られています。彼の作品は、革新的で目立つ造形ではなく、静謐な中に完璧な均衡を保つ職人技によって特徴づけられます。その背景には、家具職人として出発し、デザイナーであり製造者でもあったという稀有な経歴があります。

モラーの哲学は、一過性の流行を拒み、普遍的な美を追求する姿勢にあります。木材やペーパーコードといった素材の自然な美しさを尊重し、職人技を駆使してそれを最大限に引き出すことを目的としました。そのため、彼の椅子は美しさだけでなく、日常使用における快適性や耐久性に優れており、まさに「用と美の融合」を体現しています。

1944年に自身の工房「J.L. Møllers Møbelfabrik」を設立して以来、モラーは一貫して品質管理を自らの手で行い、設計から製造までを統合する姿勢を貫きました。この垂直統合の体制は、彼のデザイン哲学を守るための必然であり、作品の一貫性と高品質を保証するものでした。

モラーの代表作であるNo. 71、No. 75、No. 78チェアは、曲線的で有機的なフォルムと緻密な職人技が結晶した傑作として高く評価されています。その美学はハンス・J・ウェグナーの革新性やフィン・ユールの彫刻的表現とは異なり、職人の手から生まれる誠実なエレガンスとして位置づけられます。

今日に至るまでJ.L.モラー社は家族経営を続け、創業者の理念を色濃く引き継いでいます。モラーの椅子は、デンマーク国内のみならず、世界中の家庭や公共施設、そして美術館のコレクションに収められ、デンマーク職人魂の象徴としてその価値を輝かせ続けています。


About

Year: 1920-1982
Place: Aarhus(オーフス)
Manufacturer: J.L. Møllers Møbelfabrik(J.L.モラー)


History

1920: ニールス・オットー・モラー、オーフスに生まれる
1939: 家具職人としての見習いを修了
1944: オーフスにてJ.L. Møllers Møbelfabrikを設立
1946: 最初の作品「No.1 チェア」を完成させる
1951: モデル71と55を発表、国際的な評価を獲得
1952: ドイツやアメリカへ輸出を開始
1954: モデル75と56を発表、ラダーバックスタイルを確立
1959: モデル77と57を発表、より洗練された造形を展開
1961: ホイビェアに新工場を建設し生産を拡大
1962: モデル78と62を発表、代表作として評価される
1966: モデル79と64を発表、国際的な賞を多数受賞
1968: モデル80と65を発表、王室ヨット「ダンネブログ号」に採用される
1970: モデル82を発表、「エンバシーチェア」として知られる
1974: モデル83と66を発表、最も複雑な構造を持つ椅子として注目される
1974: 日本市場への輸出を開始
1974: デンマーク家具賞を受賞
1981: モデル85と68を発表、キャリアの集大成となる
1981: 2度目のデンマーク家具賞を受賞
1982: ニールス・オットー・モラー逝去、息子たちが事業を継承
2000年代: 孫娘キアスティー・アン・モラーも参画し、3代にわたり家族経営を継続
現在: デンマーク国内で生産を続け、世界各国に輸出


Furniture

・No. 1 Chair
・No. 71 Chair
・No. 55 Armchair
・No. 75 Chair
・No. 56 Armchair
・No. 77 Chair
・No. 57 Armchair
・No. 78 Chair
・No. 62 Armchair
・No. 79 Chair
・No. 64 Armchair
・No. 80 Chair
・No. 65 Armchair
・No. 82 Chair | Embassy Chair
・No. 83 Chair
・No. 66 Armchair
・No. 85 Chair
・No. 68 Armchair
・Dining Tables series
・Sideboards and Cabinets

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