Story
オーレ・イェルロフ=クヌーセン(Ole Gjerløv-Knudsen, 1930–2009)は、20世紀中盤のデンマーク・モダニズムの黄金期を代表するデザイナーであり、教育者でもありました。彼の仕事は「構造的機能主義(structural functionalism)」の探求を軸に展開され、素材の誠実な扱いと構造の合理化を徹底的に追求する姿勢によって知られています。
クヌーセンは1952年にキャビネットメーカーとしての訓練を修了した後、ルズヴィ・ポントピダン工房で木工技術を学び、その後デンマーク芸術工芸学校(Kunsthandværkerskolen)および王立デンマーク芸術アカデミーで建築学を修めました。この多角的な教育背景が、素材への深い理解と空間構成力を兼ね備えた彼の設計哲学の基礎を形成しました。
1950年代後半には建築家ヴィルヘルム・ラウリッツェンの研究部門で勤務し、デザインを分析的・構造的視点から捉える思考を身につけました。1962年、建築家トーベン・リンド(Torben Lind)との協働により誕生した「Modeline」シリーズは、拡張可能なモジュール構造と上質な素材使いで知られ、デンマーク家具史における機能美の新たな方向性を提示しました。
一方で、彼のもう一つの代表作である「OGKシリーズ」は、軽量で工具を使わずに組み立てられるノックダウン式家具であり、携帯性と機能性の両立を実現しました。特に「OGK Safari Chair」と「Daybed」は、息子のためにデザインされたという個人的な逸話を持ちながら、構造的合理性の極致を示す作品として高く評価されています。
クヌーセンは教育者としても重要な役割を果たしました。1967年から1990年までデンマーク芸術工芸学校の家具部門学部長を務め、同時にデンマーク・デザイン評議会のメンバーとして産業と教育を結びつける活動を続けました。彼の理念は、後進のデザイナーたちに「構造の誠実さと分析的思考」の重要性を教え、デンマークデザインの制度的基盤を支えました。
現代においても、Skovshoved MøbelfabrikによってOGKシリーズが復刻され、彼の合理的で人間的なデザイン哲学は再び評価されています。クヌーセンの生涯は、機能主義の知的深化と教育的継承を通して、デンマーク・モダニズムに普遍的な価値をもたらしました。
About
Year: 1930–2009
Place: Copenhagen(コペンハーゲン)
Manufacturer: Skovshoved Møbelfabrik(スコウスホヴェ・モブラー)
History
1952: キャビネットメーカーとしての訓練を修了、ルズヴィ・ポントピダンの下で勤務
1955: デンマーク芸術工芸学校(Kunsthandværkerskolen)を卒業
1957–1960: ヴィルヘルム・ラウリッツェン研究部門で勤務
1962: トーベン・リンドと共に「Modeline」シリーズを発表
1967–1990: デンマーク芸術工芸学校の家具部門学部長を務める
1977: デンマーク・デザイン評議会メンバーに就任
2008: Skovshoved Møbelfabrik によりOGKシリーズが復刻
2009: 逝去(コペンハーゲンにて)
Furniture
・Modeline Sofa | モジュラーソファ
・Modeline Easy Chair | イージーチェア
・Modeline Shelving Unit | シェルフユニット
・OGK Safari Chair | サファリチェア
・OGK Daybed | デイベッド
・OGK Folding Stool | フォールディングスツール
・OGK Table | テーブル
・OGK Footstool | フットスツール
・OGK Hammock | ハンモック
・Model 175 Easy Chair | イージーチェア
・Modeline Louise Sofa | ルイーズソファ
・Modeline Coffee Table | コーヒーテーブル
・OGK Canvas Chair | キャンバスチェア
・Modeline Armchair | アームチェア
・Modeline Corner Unit | コーナーユニット
・OGK Portable Chair | ポータブルチェア
・OGK Storage System | ストレージシステム
・Modeline Lounge Chair | ラウンジチェア
・Modeline Ottoman | オットマン
・OGK Side Table | サイドテーブル