Story
オーヴェ・ランダーは、デンマーク・モダンの黎明期において重要な役割を果たしたスネッカメスター(マスター・キャビネットメーカー)である。彼の工房はコペンハーゲンのブレードゲー通りに構えられ、家具職人組合に所属する熟練工房として活動していた。ランダーは単なる木工職人ではなく、新たなアイデアを柔軟に受け入れ、若いデザイナーと共に革新的な作品を世に送り出す存在であった。
特に1938年、ハンス・J・ウェグナーと共同で家具職人組合展に出展したことは、デンマーク家具史における転換点とされる。学生であったウェグナーのデビューを支え、天然木を活かしたダイニングセットやソーイングテーブル、イージーチェアを発表した。その中でも「ストランゲルップ・チェア」と呼ばれる椅子は、後のウェグナー作品のスタイルを予告するものとして高く評価されている。
工房はその後も独立した事業を継続し、1947年にはウォールナット材によるデスクやサイドボード、1957年には追加ユニットを製作するなど、顧客の信頼に応える作品を残した。商業的量産とは一線を画し、特注家具を中心とした活動を続けることで、デンマーク家具職人としての矜持を守り抜いた工房であった。
About
Year:1930年代〜1950年代
President:Ove Lander
Designer:Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Place:コペンハーゲン
History
1548 コペンハーゲン家具職人組合が設立される
1927 家具職人組合展が開始され、革新的な実験の場となる
1930 オーヴェ・ランダーがブレードゲー通りに工房を構える
1938 ハンス・J・ウェグナーと共同で家具職人組合展に参加
1938 天然オーク材のダイニングセットを発表
1938 天然マホガニー材のソーイングテーブルを制作
1938 「ストランゲルップ・チェア」と呼ばれるイージーチェアを展示
1938 ダイニングセットを娘の結婚祝いとして贈呈
1940 工房活動を継続し、家具の注文制作を受ける
1945 戦後の需要増加により注文家具の依頼が拡大
1947 ウォールナット材のデスクとサイドボード一式を製作
1947 蛇腹扉や引き出し式リーフを備えた革新的な構造を導入
1950 家具の品質と独自性により、顧客から信頼を得る
1952 工房作品に紙ラベルが貼付されることが一般化
1955 戦後復興期の需要に応じ、特注家具制作を続ける
1957 1947年のセットに合わせた追加ユニットを製作
1957 収納ユニットにエボナイズド仕上げを採用
1960 職人としての評価が確立し、家具職人組合での存在感を高める
1965 工房活動の記録が減少し、以降は限定的な活動となる
Furniture
・Dining Set 1938
・Sewing Table 1938
・Easy Chair 1938 | ストランゲルップ・チェア
・Desk 1947
・Sideboard 1947
・Storage Unit 1957
Imprint/Label
・工房作品には「職人による紙ラベル」が貼られていた
・1940年代後半の作品にはウォールナット仕上げに加え、紙ラベルで工房の認証が確認できる
・1950年代には同仕様のラベルが継続使用され、家具の真正性を保証する役割を担った