About
Designer: Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1965
Material: Plywood, Fabric/Leather, Aluminium
Size: W 49 × D 60 × H 92–121 × SH 44 cm
Story
オックスフォードチェアは、アルネ・ヤコブセンが英国オックスフォード大学セント・キャサリンズ・カレッジのために設計した特注椅子「プロフェッサーチェア」を起源としています。この椅子は、単なる家具ではなく建築プロジェクトの一部として構想され、総合芸術(Gesamtkunstwerk)の理念を体現する存在でした。
ヤコブセンは、伝統あるオックスフォードの建築的要素を尊重しながらも、ガラスやコンクリート、特注の黄色い煉瓦といった近代的素材で再解釈し、伝統とモダニズムの対話を実現しました。プロフェッサーチェアの極端に高い背もたれは、教授陣の権威を象徴し、食堂内での階層的秩序を強調しました。
その後フリッツ・ハンセン社の手により、プロフェッサーチェアは量産化され「オックスフォードチェア」として発表されました。木製構造から布や革張りの成形合板シェルとアルミニウム脚部へ進化し、快適性と機能性を備えたオフィスチェアとして展開されました。背もたれの高さやアームの有無、脚部仕様のバリエーションが体系的に整理され、モデル番号に基づいてシリーズ化されました。
オックスフォードチェアのデザイン上の特徴は、シングルカーブによる一体的な背と座のシェルにあります。この滑らかな曲線は、彫刻的で威厳あるフォルムを生み出し、教授陣の権威を象徴する役割を果たしました。さらに成形合板の技術と最新の人間工学的改良により、現代のオフィス空間においても高い実用性を維持しています。
今日でもフリッツ・ハンセン社が継続して製造を担い、クラシックデザインとしての姿を保ちながら進化を続けています。オックスフォードチェアは、象徴性と快適性を兼ね備えた稀有な存在として、モダンデザイン史において不朽のアイコンであり続けています。