Story
P. Jeppesen Møbelfabrikは、デンマーク・モダンの黄金期における最も興味深い工房のひとつです。その理由は、二つの異なる潮流を同時に体現した点にあります。すなわち、オーレ・ヴァンシャーが示した古典的で洗練されたモダニズムと、グレーテ・ヤルクが推し進めた革新的かつ実験的な未来志向のデザインです。工房は、その両方を支える「二元性の拠点」として存在しました。
拠点はストア・ヘディンゲに置かれ、1940年代から1960年代にかけて最盛期を迎えました。工房の理念は「量より質」にあり、大量生産を行ったFrance & Sønのような企業とは異なり、複雑で繊細なデザインを高い基準で仕上げることを使命としました。マホガニーやチーク、ローズウッドといった高貴な木材を主材とし、職人技と工業的精度を融合させた生産体制は、彼らを「職人的工房(Artisanal Manufactory)」たらしめました。
P. Jeppesenの最も有名な成果の一つは、オーレ・ヴァンシャーの「コロニアルチェア」に代表される古典的デザインの普及です。一方で、グレーテ・ヤルクによる「GJチェア(シェルチェア)」のような高度な合板技術を要する実験的作品も生み出されました。商業的には困難を伴ったものの、同作はMoMAに収蔵され、国際的に高く評価されました。
2012にカール・ハンセン&サンに吸収され、その多くのデザインが今日も復刻・継承されています。P. Jeppesenは単なるメーカーではなく、革新のパトロンとして、デンマーク・モダンの歴史を象徴する存在でした。
About
Year:1940–2012
President:Poul Jeppesen
Designer:Ole Wanscher(オーレ・ヴァンシャー)、Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)、Wilhelm Wohlert(ヴィルヘルム・ヴォラート)、H. Brockmann-Petersen(H. ブロックマン・ペーターセン)
Place:ストア・ヘディンゲ
History
1940:ストア・ヘディンゲにてP. Jeppesen Møbelfabrik創業
1949:オーレ・ヴァンシャーと協業開始、コロニアルチェア PJ-149を発表
1950:ルングステッドルンドシリーズ製作開始
1951:セネターシリーズのソファ・ラウンジチェアを発表
1950年代:オーレ・ヴァンシャーが主任デザイナーに就任
1950年代後半:ウィルヘルム・ヴォラートがダイニングチェアをデザイン
1960:H. ブロックマン・ペーターセンによるデスクチェアを製作
1963:グレーテ・ヤルクがGJチェア(シェルチェア)を発表、MoMAに収蔵
1960年代:ヤルクによるネストテーブルやサービングトロリーを製作
1970:輸出市場拡大、デンマーク家具品質管理委員会のマークを取得
1980:ヴァンシャーの作品群が国際的に再評価される
1990:ヤルク作品の希少性が市場で認知される
2000:P. Jeppesen製品のコレクター人気が高騰
2009:ランゲ・プロダクションがGJチェアを復刻生産開始
2010:ヴィンテージ市場における取引価格が上昇
2012:カール・ハンセン&サンに買収され、ブランドとしての幕を下ろす
2012以降:ヴァンシャー作品がカール・ハンセン&サンにより復刻
2015以降:国際的オークションでGJチェアが高額落札を記録
2020年代:工房のデザインがデンマーク家具史の核心として評価され続ける
Furniture
・Colonial Chair PJ-149 | コロニアルチェア
・Rungstedlund Series
・Senator Sofa and Lounge Chair
・PJ-112 Sofa
・PJ-412 Armchair
・GJ Chair | シェルチェア
・Nesting Tables
・Serving Trolley
・Desk Chair(H. Brockmann-Petersen)
・Dining Chair(Wilhelm Wohlert)