ハンス・J・ウェグナーが1951年にデザインしたパパベアチェアは、現在も複数のメーカーによって異なる仕様で製造されています。その中で比較されることが多いのが、PP MøblerのPP19と、アメリカのMODERNICAが製造するPapa Bear Chairです。
両者は一見するとよく似ていますが、製造背景、張り構造、使用される素材、木部のつくりなどには明確な違いがあります。本記事では、メーカーが公開している情報と実物のディテールをもとに、それぞれの特徴を整理します。

PP MøblerのPP19
PP Møblerの公式資料では、PP19はHans J. Wegnerが1951年にデザインしたPapa Bear Chairとして紹介されています。PP Møblerは1953年からAP Stolen向けにこの椅子のフレーム製作を開始しており、パパベアチェアはウェグナーとPP Møblerの長い協働関係の出発点となった作品でもあります。
現在のPP19も、無垢材のフレームを基礎として、綿、パームリーフ、亜麻繊維、馬毛などの天然素材を重ねながら形を作っています。背もたれには金属スプリングを使用し、ジュートストラップと組み合わせながら支持力を調整しています。PP Møblerは一脚の製作に最低でも約2週間を要すると説明しており、木工と張りの双方に多くの手作業を必要とする椅子です。
MODERNICAのPapa Bear Chair

ロサンゼルスを拠点とするMODERNICAも、Papa Bear Chairを製造しています。同社はこの椅子をHans Wegnerのデザインとして紹介しており、カリフォルニアの自社工場で製造しています。
MODERNICAは伝統的な構造を用いて製作していると説明していますが、張り材にはアメリカ製の高密度フォームを使用しています。また、脚部とアーム先端の木部には北米産のウォルナットまたはメープルが設定されています。張地には多数のファブリックやレザーを選択でき、受注生産で仕上げられています。
PP19とMODERNICAの違い
| PP19 | MODERNICA | |
|---|---|---|
| Manufacturer | PP Møbler | MODERNICA |
| Production | Denmark | California, USA |
| 歴史的な関係 | 1953年からAP Stolen向けフレーム製作に関与 | 独自の生産体制で現在製造 |
| 張り構造 | 天然素材を積層し、スプリングを使用 | 高密度フォームを使用 |
| 主な木部 | オーク、アッシュ、チェリー、ウォルナットなど | ウォルナット、メープル |
| 製造方法 | 木工・張りともに手作業中心 | カリフォルニアの自社工場で受注生産 |
最も大きな違いは、外観よりも内部にあります。PP19では天然素材とスプリングを組み合わせ、張り職人が素材を積み重ねながらフォルムを形成しています。一方、MODERNICAでは高密度フォームを主要な張り材として使用しています。
この違いは、単なる材料の差ではありません。椅子の形をどのように作るか、長期間の使用によってどのように変化するかという、製造思想そのものの違いにつながっています。
内部構造と張りの違い

PP19では、パームリーフなどの植物繊維で基本形を作り、その上に馬毛や綿を重ねています。背もたれにはコイルスプリングが使われ、最後にボタンを締め込みながら背の形を微調整します。素材そのものの弾力や硬さを組み合わせて、座ったときの支持力を作っている点が特徴です。
MODERNICAは公式に高密度フォームの使用を明記しています。フォームは均一な形を作りやすく、製品として安定したフォルムを維持しやすい素材です。そのため、外観が近い椅子であっても、内部で形を支えている素材と構造は同じではありません。
アーム先端と木部
パパベアチェアを象徴するディテールが、アーム先端に露出した木部です。熊の前足を思わせるこの部分は、椅子全体の印象を決める重要な要素でもあります。
PP19では、選択する仕様によってオーク、アッシュ、チェリー、ウォルナットなどの木材が使われます。MODERNICAでは、ウォルナットまたはメープルが設定されています。使用される樹種だけでなく、削り出しの形や張地との取り合いにもそれぞれの製造上の特徴が表れます。
フォルムの違い
正面や斜めから見比べると、背もたれの立ち上がり、ウイングの広がり方、座面の厚み、アーム周辺のボリュームなどに違いを感じます。ただし、写真は撮影角度や張地によって印象が変わるため、画像だけから寸法差を断定することはできません。
重要なのは、どちらも単純な外形だけで評価するのではなく、内部構造や素材を含めて比較することです。パパベアチェアのフォルムは、内部のフレームと張り構造によって作られているため、製法の違いが最終的なシルエットにも影響します。
同じ「Papa Bear Chair」でも別の製品として見る
PP MøblerのPP19とMODERNICAのPapa Bear Chairは、いずれもウェグナーの1951年のデザインを起点としていますが、現在の製造元、素材、張り構造、生産工程は異なります。そのため、外観が似ているからといって、同じ仕様の椅子として捉えるのは適切ではありません。
PP19には、1953年からAP Stolen向けのフレーム製作に関わってきたPP Møblerの製造史があります。一方、MODERNICAはカリフォルニアの自社工場で独自の仕様によるPapa Bear Chairを製造しています。両者の違いを見ることで、同じデザインが異なる製造思想によってどのように形になるのかを比較できます。
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