About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1968
Material: Oak, Ash, Beech, Walnut, Flag Halyard, Metal fittings, Fabric/Leather
Size: W86 × D86 × H104 cm
Story
PP129 ウェブチェアは1968年にデザインされたハンス・J・ウェグナー後期の代表作のひとつです。無垢材を彫刻的に削り出したフレームと、蜘蛛の巣のように編み込まれたフラッグハリヤードによる背もたれが融合し、重厚さと透明感を同時に体現しています。
この椅子は当初ヨハネス・ハンセン工房で「JH-719」として製造され、2012年にPPモブラーによって復刻されました。両工房に共通する職人技と妥協なき品質基準によって、この作品は時代を超えて受け継がれています。
最大の特徴は、無垢材を大きく削り出したアームレストと、フラッグハリヤードの緻密な編み込みです。フレームの角度や座面の傾斜は、座る人を自然に深く支えるように設計されており、快適性と美しさが両立しています。
発表当時、ウェグナーは6脚すべてを鮮やかな赤で塗装して展示しました。木目を覆い隠すこの演出は、素材よりもフォルムそのものに注目させる意図的な挑戦であり、家具を芸術的表現へと昇華させる宣言でもありました。
ウェブチェアは後に登場するPP124 ロッキングチェアやPP130 サークルチェアへとつながる布石であり、ウェグナーのデザイン探究が長期的かつ連続的に展開されたことを示しています。空間に置けば圧倒的な存在感を放ちつつ、背もたれの透過性により軽やかさも併せ持つ、まさに有機的な透明性の象徴といえる椅子です。