PP135 Hammock Chair | ハンモックチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1967
Material: Oak, Ash, Nylon, Jute, Metal
Size: W75 × D182 × H71 cm / SH53 cm


Story

PP135 ハンモックチェアは、ハンス・J・ウェグナーが「安息の構造」をテーマに構想した彫刻的なリクライニングチェアです。1960年代初頭にサークルチェアのスケッチに登場したフラッグ・ハリヤードの発想が基盤となり、1967年に発表されました。その後長らく製造が途絶えたものの、1999年にPPモブラーによって復刻され、今日まで受け継がれています。

この椅子の本質は、木製フレームとフラッグラインが一体となって生み出す浮遊感にあります。ナイロンコアをジュートで編み込んだ特製のフラッグラインは、高い張力と柔軟性を兼ね備え、身体を優しく受け止めながらも必要以上に沈み込むことを防ぎます。その緊張感は、ただ「座る」という行為を超え、構造そのものに身を委ねる深い安息体験をもたらします。

フレームにはオークやアッシュの無垢材が使用され、ソープ仕上げやオイル仕上げが選択可能です。ロープの色、金属クリップの素材(ステンレス、真鍮、ブラック)など、多様な仕様の組み合わせが用意されており、使用者の好みに応じた一脚を作り上げることができます。そのプロセスは、PPモブラーが誇る妥協なき職人哲学によって支えられています。

ウェグナーはPPモブラーを単なる製造業者ではなく「チームの一員」と捉え、工房を訪れて職人と直接対話を重ねました。その信頼関係はPP135のような高度な構造美を実現する基盤となり、現代においてもその精神は生き続けています。

PP135は「考えるための椅子」ではなく「考えないための椅子」と評されます。静けさの中で自らを解放する時間を与えるこの椅子は、デザインと職人技が融合した「安息の彫刻」として、デンマークモダンデザインの遺産に数えられるべき存在です。

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