PP76 Chinese Table | チャイニーズテーブル


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1947
Material: Mahogany, Cherry
Size: Ø120 × H72 cm(Extension possible)


Story

PP76 チャイニーズテーブルは、ハンス・J・ウェグナーが1940年代半ばに取り組んだ「チャイナシリーズ」の思想を、テーブルという形式で結晶させた作品です。ウェグナーはしばしば椅子のデザイナーとして語られますが、彼の設計思想は常に空間全体を対象としており、テーブルもまた構造と機能を徹底的に思考された存在でした。

本作の背景には、中国明代家具に見られる簡潔で秩序ある構造への深い関心があります。ウェグナーはその造形を直接的に引用するのではなく、構造的合理性のみを抽出し、装飾性を排したモダンな家具として再構成しました。円形天板と細身の脚部、そして幕板と脚が連続的につながる造形は、チャイナチェアと共通する静かな緊張感を備えています。

PP76の特徴は、視覚的な軽やかさと構造的安定性が高い次元で両立している点にあります。脚部と幕板の接合部は、単なる構造処理ではなく、木材の流れを止めずに力を受け止めるための造形として設計されています。この部分において、ウェグナーが家具を「建築的構造体」として捉えていたことが明確に読み取れます。

また、PP76は伸長機構を内包したテーブルとして設計されています。通常時は円形テーブルとして端正な佇まいを保ちつつ、必要に応じて拡張することで、用途の変化に柔軟に対応します。機構は構造の中に自然に組み込まれており、伸長時であっても造形の一体感が損なわれることはありません。

素材にはマホガニーやチェリーといった、経年変化によって深みを増す木材が用いられています。これらの素材は、形態の強さを誇示するのではなく、時間とともに静かに存在感を高めていくPP76の性格とよく調和しています。表面的な主張を抑えた仕上げによって、構造そのものが際立つ点も、このテーブルの重要な要素です。

PPモブラーによる現行生産においても、ウェグナーの設計意図は忠実に継承されています。金属補強に頼らず、木工技術そのものによって強度と精度を確保する姿勢は、PP76を単なる復刻品ではなく、現在進行形の工芸として成立させています。

PP76 チャイニーズテーブルは、異文化の構造思想を起点としながら、デンマーク・モダンの文脈の中で再構築された作品です。その静かな佇まいの背後には、構造・機能・素材に対するウェグナーの一貫した思考が息づいており、空間に秩序と緊張感をもたらすテーブルとして位置づけられます。

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