About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1984
Material: Ash, Oak, Flag Halyard, Fabric, Leather, Stainless Steel, Brass
Size: W75-76 × D66-88 × H107-108 cm / SH40-43 cm
Story
PP124ロッキングチェアは、1984年にハンス・J・ウェグナーが晩年に手掛けた作品であり、彼の成熟したデザイン哲学を体現しています。単なる揺り椅子ではなく、フォルムと機能のバランスを突き詰めた「動きの中の芸術」とも言える存在です。
この椅子は、PPモブラーとの緊密な協働の中で生まれました。開発過程では、工房のエイナー・ペダーセンが初期案を「少しおばさんっぽい」と評した逸話が残っており、その批評を受けてウェグナーは2週間後に改訂版を持ち帰りました。その背もたれに採用されたフラッグハリヤードは、この椅子の最も象徴的な要素となり、軽やかさと強度を兼ね備えた革新的な素材選択として評価されています。
デザインの背景には、アメリカのシェーカー家具からの影響も見られます。シンプルさと実用性を重視するシェーカーの精神を、北欧の職人技と融合させ、透明感のある紐の背もたれと無垢材フレームが織りなす造形美を生み出しました。ウェグナーの「椅子は人が座って初めて完成する」という哲学のもと、人間工学的な快適性も徹底的に考慮されています。
また、PPモブラーの卓越した職人技が、この椅子を特別な存在にしています。アッシュやオークのフレームはソープ仕上げやオイル仕上げなど多様な仕上げから選べ、フラッグハリヤードや金具、クッションの張地も幅広くカスタマイズ可能です。そのため、空間や使用者の個性に合わせた一脚が生み出され、世代を超えて受け継がれる家具としての価値を持ちます。
PP124は、単に座るための椅子ではなく、身体の動きに寄り添い、視覚的・触覚的な体験を提供する存在です。バランスの取れたロッキングはリラクゼーションをもたらし、軽やかな外観は空間に透明感と落ち着きを加えます。まさに、ウェグナーが晩年に到達した「究極の機能美」を体現する作品といえるでしょう。