デザイン思想と開発背景
TERRA®レザーは、デンマークのレザーブランド「Sørensen Leather(ソーレンセン・レザー)」と、建築・デザイン事務所「ノーム・アーキテクツ(Norm Architects)」の協働によって生まれた素材です。ノーム・アーキテクツは、触覚や光の感覚を通して心身を整えるようなデザインを追求しており、TERRA®もその思想を反映したコレクションとして位置づけられています。
素材の魅力を引き出すために、装飾や加工を最小限に抑え、自然が持つ静かな存在感を重視しています。ノーム・アーキテクツの「引き算の美学」とソーレンセン・レザーの職人的技術が融合することで、使うほどに深みが増す、穏やかな表情の革が生まれました。
素材と質感
TERRA®レザーは、アニリン仕上げによって革本来の肌理や自然な表情をそのまま残しています。マットな表面はシルクのように滑らかで、わずかに起毛したベルベットのような触感を持っています。
厚みは1.2〜1.4mmで、水性染料による仕上げとクロム鞣しが採用されています。触れたときの柔らかさは、家具に張られた際にも心地よい緊張感を保ちながら、上品な落ち着きを与えます。使い込むほどに艶が加わり、革の個性が静かに浮かび上がります。
色の構成と世界観
TERRA®のカラーパレットは、ノーム・アーキテクツの監修によって構築されました。Soil、Sand、Clay、Ochre、Basaltなど、地層や鉱物を思わせるアーストーンの色調が中心です。
それぞれの色は強い主張を避け、空間全体に自然な陰影をもたらします。光の当たり方や家具の木部との組み合わせによって、同じ色でも異なる深みを見せる点が特徴です。色そのものが主張するのではなく、周囲の素材との調和によって空間を整える設計思想が貫かれています。
サステナビリティと仕様
TERRA®レザーは、環境と人への配慮を前提とした設計がなされています。OEKO-TEX®認証を取得し、有害化学物質を排除した安全な製法で生産されています。PFASやフタル酸を含まず、LWG(Leather Working Group)の基準にも準拠。製造時のCO₂排出量は8.7kg/m²とされています。
サステナブルなアプローチを重視するソーレンセン・レザーの理念と、長く使い続けることで価値を高める北欧デザインの思想が重なり、TERRA®は現代の素材として理想的な位置づけを持っています。
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