Story
田根剛(1979年東京都生まれ)は、現代建築界において「場所の記憶」を掘り起こす建築家として国際的に知られています。彼の建築哲学「未来の考古学(Archaeology of the Future)」は、過去の文脈を未来の価値へと再構築するという思想に基づき、土地固有の記憶と人間の営みを結びつける試みとして高く評価されています。
デンマーク王立アカデミーでの研究員経験や北欧での活動を経て、2006年にはエストニア国立博物館の国際設計コンペティションで最優秀賞を受賞し、世界的注目を集めました。以後、パリを拠点にDGT.(DORELL. GHOTMEH. TANE / ARCHITECTS)を設立し、2017年からは自身の事務所Atelier Tsuyoshi Tane Architects(ATTA)を率いて活動しています。
田根氏の建築は、単なる形態の創造ではなく「記憶の継承」と「未来への提言」を同時に行うものです。エストニア国立博物館では旧ソ連軍滑走路という負の遺産を建築の一部として再生し、弘前れんが倉庫美術館では産業遺産の煉瓦を未来の文化へと結びつけました。これらの作品は、建築が歴史と社会における対話の場となりうることを実証しています。
彼はまた、福岡市の博多旧市街プロジェクトなど都市スケールの再生にも取り組み、「物語をつなぐ建築」を通して地域アイデンティティを再構築しています。建築が過去と未来を媒介する文化的装置であるという彼の思想は、国際的な建築批評の文脈においても重要な位置を占めています。
田根氏は2022年にフランス文化省より芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与され、フランス国外建築賞を複数回受賞するなど、世界的に最も注目される日本人建築家の一人として位置づけられています。
About
Year: 1979–
Place: Tokyo(東京) / Paris(パリ)
Manufacturer: Atelier Tsuyoshi Tane Architects(アトリエ・ツヨシ・タネ・アーキテクツ)
Philosophy: Archaeology of the Future(未来の考古学)
Award: Chevalier de l’Ordre des Arts et des Lettres(2022)
History
2002: 北海道東海大学芸術工学部建築学科を卒業。
2003: スウェーデン・シャルマス工科大学に留学。
2004: デンマーク王立アカデミーで客員研究員を務める。
2006: エストニア国立博物館国際設計コンペで最優秀賞を受賞。
2006: DGT.(DORELL. GHOTMEH. TANE / ARCHITECTS)をパリに設立。
2014: ミラノ・デザイン・アワードを2部門で受賞(LIGHT is TIME)。
2016: エストニア国立博物館が開館、Grand Prix AFEX受賞。
2017: Atelier Tsuyoshi Tane Architects(ATTA)を設立。
2018: 作品集『Archaeology of the Future』をTOTO出版より刊行。
2020: 弘前れんが倉庫美術館を開館、産業遺産の再生が高評価を得る。
2021: Grand Prix AFEX(フランス国外建築賞)を再度受賞。
2022: フランス文化勲章シュヴァリエ章を受勲。
2023: Tane Garden House(ヴィトラキャンパス)を完成。
2024: 博多旧市街プロジェクト進行中。
今後: 東京・帝国ホテル再構築プロジェクトに参画予定。
Works
・Estonian National Museum | エストニア国立博物館
・Hirosaki Museum of Contemporary Art | 弘前れんが倉庫美術館
・Tane Garden House | ヴィトラキャンパス
・Restaurant Kei | レストラン・ケイ(パリ)
・CHISO Flagship Store | 千總 旗艦店
・Todoroki House in Valley | 等々力の住宅
・Hakata Old Town Project | 博多旧市街プロジェクト
・LIGHT is TIME | ライト・イズ・タイム
・Archaeology of the Future Exhibition | 未来の考古学展
・Imperial Hotel Tokyo Redevelopment | 帝国ホテル東京再構築