Story
ヴィリー・ベックは、デンマーク・モダンの黄金時代に活躍した卓越したスネーカーマイスター(指物師)であり、単なる製作家ではなく、デザインを現実に変換する創造的パートナーとして位置づけられます。彼の工房はコペンハーゲンに拠点を置き、家具職人ギルド展をはじめとする舞台で数多くの傑作を生み出しました。
特にアイナー・ラーセンとアクセル・ベンダー・マッセンとの四半世紀にわたる協働関係は、彼の名を不朽のものとしています。ラーセン&マッセンが追求した機能性と普遍性を、ヴィリー・ベックは正確な素材知識と高度な技術で具現化し、デンマーク家具芸術の頂点を築き上げました。
ベック工房の作品は、アームチェアやソファ、デスク、ゲームテーブルなど多岐にわたり、その特徴は精緻な接合、上質な素材、そして美しい仕上げにあります。今日でも「Larsen & Madsen for Willy Beck」という表記が市場で使われるのは、彼の工房が真正性と品質の保証印であることを意味しています。
このようにヴィリー・ベックは、デザイナーの影に隠れることなく、モダニズムを支えた職人として、デンマークデザイン史において不可欠な存在として記憶されています。
About
Year:1940年代後半 – 1970年代頃
President:Willy Beck
Designer:Ejner Larsen(アイナー・ラーセン)、Aksel Bender Madsen(アクセル・ベンダー・マッセン)
Place:コペンハーゲン
History
1947:アイナー・ラーセンとアクセル・ベンダー・マッセンがヴィリー・ベックと協業を開始
1947:コペンハーゲン家具職人ギルド展にラーセン&マッセンと共同出展
1948:スポークバックソファを製作し、ギルド展にて発表
1949:チーク材を用いた初期のアームチェアを発表
1950:ケイン張りチェアを製作、細やかな手仕事が高評価を得る
1952:メトロポリタンチェアを発表(後にフリッツ・ハンセン製造へ移行)
1953:チーク材とレザーを組み合わせたアームチェアをギルド展に出展
1954:カンファレンスチェアを発表、機能的デザインで注目を集める
1956:ギルド展年間賞を受賞(ラーセン&マッセン作品を製作)
1957:パートナーズデスクを製作し、ギルド展で発表
1958:マホガニー材を用いた高級キャビネットを製作
1960:ニューヨーク・メトロポリタン美術館に椅子が収蔵される
1961:ギルド展で再び年間賞を受賞
1963:チーク材サイドテーブルを製作、ラベル付きの個体が現存
1965:陶製タイル天板を用いたコーヒーテーブルを製作
1966:ローズウッドのゲームテーブルを発表(チェス盤・革張り収納付き)
1968:真鍮ディテールを備えたデスクを製作
1969:住所録に「Beck Willy」の名がクラセンスガーデ通りに記載される
1970:ローズウッド製クレデンツァを製作、カイ・ヴィンディング作品としても知られる
1972:ラーセン&マッセンとの協業が終息、25年以上にわたる関係が幕を閉じる
Furniture
・Metropolitan Chair
・Spoke-back Sofa
・Armchair Model 4401
・Conference Chair
・Drop-leaf Executive Desk
・Partners Desk
・Rosewood Game Table
・Coffee Table with Tile Top
・Rosewood Credenza