PP56・PP66 Chinese Chair | チャイニーズチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1945(PP66 原型)、1989(PP56 生産開始)
Material: Oak, Ash, Cherry, Leather, Paper cord
Size: W580 × D530 × H800 × SH430 mm


Story

ハンス・J・ウェグナーが手掛けたPP56 ・ PP66チャイニーズチェアは、彼の代表作「ザ・チェア」や「Yチェア」の源流にあたる作品です。中国・明代の肘掛椅子「圏椅」に強い影響を受けたこの椅子は、オリエンタルなフォルムを基盤としながらも、デンマークの職人技術によって再解釈されました。曲木を駆使した背もたれとアームの連続的なライン、体に自然に馴染む彫刻的な背板、そして堅牢性を支える貫(ぬき)の構造は、単なる模倣ではなく、実用性と美を融合させた新しい価値を体現しています。

PP66は1945年にフリッツ・ハンセンのためにデザインされたモデルを原型とし、その後1976年にPPモブラーが再生産を開始しました。ペーパーコードの座面は、使い込むほどに柔らかく馴染み、経年変化の美を楽しむことができます。PP56は1989年にPPモブラーから生産が始まり、アニリンレザーを座面に採用することで、より洗練された印象と豊かな質感を備えました。革は時間とともに深みを増し、所有者とともに歴史を刻んでいきます。

初期のチャイナチェアは「装飾過多」「貧弱」と批判されましたが、その経験を糧に改良を重ねた結果、チャイニーズチェアは堅牢性と快適性を兼ね備えた普遍的なフォルムへと進化しました。これこそが、後の「ザ・チェア」や「Yチェア」誕生の礎となったのです。PPモブラーの高い木工技術、蒸気曲げやCNC加工といった革新的製法との融合は、ウェグナーの複雑なデザインを完璧に実現し、現代でも通用する普遍的な名作としての地位を確立しています。

PP56 ・ PP66は、天然素材が持つ経年変化の美しさと、職人の手による精緻な構造を融合した作品です。それは単なる椅子ではなく、使い手と共に時を刻み、生活に寄り添う「育てる家具」であり、またウェグナーの創造的探求の証としてデザイン史に残る文化的アイコンとなっています。

 

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