About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1955
Material: Teak, Oak, Fumed Oak, Rattan
Size: W130 / 160 × D50.5 × H50 cm
Story
AT10長方形テーブルは、ハンス・J・ウェグナーとアンドレアス・ツックの協業が最も純度高く結晶した作品の一つです。1950年代半ばの発表期において、日常の道具としての合理性と彫刻的な造形美を同時に満たすデンマーク・モダンの理念を、端正な長方形のフォーマットで体現しています。
天板は外周に向かって薄くテーパーし、縁にはごく控えめな立ち上がり(リップ)を設けています。視覚的には軽やかさを、機能面では物が滑り落ちにくい安心感を与える設計で、ウェグナーの「機能と美の一致」という姿勢が明快に読み取れます。
脚部はほどよく先細り、接合部の処理は構造的合理性を損なうことなく、静かな表情をつくります。下段のシェルフには籐(ラタン)を用い、質感の差異によって全体の印象に温かみと軽快さを添えています。視覚的な透け感が、長方形の平面に生まれがちな重さを和らげ、空間への収まりを良くします。
AT10は、書籍や日用品を手の届く位置に置ける利便性と、リビングに置いたときの静謐な佇まいを両立させています。造形の主張を過度に前面化せず、素材と構造の「正直さ」で魅せるところに、ウェグナーとツックの信頼関係に根ざした設計の成熟が感じられます。
本作は、素材や仕上げの派手な演出に頼らず、プロポーションとディテールの整合によって完成度を高めるタイプのテーブルです。結果として、現代の空間においても違和感なく機能し、使い込みとともに表情が深まっていく「日常の基準器」のような存在として評価されています。
