AT33 Drop Leaf Table | ドロップリーフテーブル


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1950
Material: Teak, Oak, Rattan
Size: W67–68.5(117–119) × D57–58 × H60–62 cm


Story

AT33 ドロップリーフテーブルは、ハンス・J・ウェグナーが1950年代にデザインし、アンドレアス・ツック社によって製造された作品です。ウェグナーは椅子の巨匠として知られていますが、テーブルやキャビネットのデザインにおいても革新性を示しました。その中でAT33は、彼の哲学である「オーガニックな機能性」を最も小さなスケールで表現した傑作のひとつです。

特徴的なのは、両側に折りたためるドロップリーフ式の天板、多区画の引き出し、籐製の引き出し式バスケット、そして下部の棚板という、複数の機能を巧みに統合した構造です。これらは単なる利便性の追求ではなく、使用者の生活動線を自然に導く「機能美」として計算されており、日常の作業を効率的かつ優雅に支えるための工夫が随所に見られます。

素材には温かみのあるチーク材と堅牢なオーク材が組み合わされ、さらに籐のバスケットや真鍮の金具が加えられることで、異素材の調和が生まれています。アンドレアス・ツックの高い木工技術が、この多機能構造を実現させ、細部まで精緻に仕上げられた工芸性を示しています。

アンドレアス・ツック社は1972年に閉業しましたが、その過程で製造されたAT33は、特定の時代にしか存在しない希少なプロダクトとなりました。後年、PPモブラーが一部のテーブル作品を引き継いだものの、AT33は引き継がれず、オリジナルの存在感が一層際立っています。

椅子作品のように彫刻的な存在感を誇るのではなく、生活のなかに寄り添うような「静かな美しさ」を持つ点が、AT33の独自性です。小ぶりでありながら高機能な構造は、ウェグナーの創造性の幅広さと、素材と技術への深い理解を体現しています。

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