About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1955
Material: Teak, Oak, Brass
Size: W 136–232 × D 76 × H 72 cm
Story
ハンス・J・ウェグナーが1955年にデザインし、アンドレアス・ツックによって製作された「AT305 ドロップリーフテーブル」は、彼の有機的機能主義の哲学を最もよく体現する作品のひとつです。コンパクトな机としても、大人数に対応できるダイニングテーブルとしても使えるこのモデルは、ウェグナーが「家具デザイナーである前に大工である」と語った信念を反映し、機能と美の調和を実現しています。
AT305の特徴は、ドロップリーフ機構によって幅を136cmから232cmへと拡張できる点にあります。背面まで美しく仕上げられており、部屋の中央に自立して置いても彫刻作品のような存在感を放ちます。チーク材の天板とオーク材の脚を組み合わせたモデルが多く見られ、素材のコントラストが軽やかで温かみのある印象を与えています。
テーブルには3つの引き出しが備わり、そのうちのひとつには鍵が掛けられる仕組みがあり、さらに内部には事務用品を整理できる精巧な仕切りが隠されています。単なる実用的な収納ではなく、日常の細部にまで寄り添うウェグナーの思考が反映されたディテールです。特に彫刻的に造形された取っ手は、このテーブルを象徴するデザイン要素となっています。
アンドレアス・ツックとの協業は、AT305を含めAT303やAT312など数多くのモデルを生み出しました。このパートナーシップは、伝統的な職人技とモダンな機能主義を結びつけ、デンマーク家具史における重要な足跡を残しています。AT305はその代表的成果として、今日も世界中のコレクターや愛好家から高い評価を受けています。

