About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year:
Material: Oak / Teak
Size: Ø120 × H72(拡張時 220 × 120 × H72 cm)
Story
AT329 ダイニングテーブルは、ハンス・J・ウェグナーがデザインし、アンドレアス・ツック社によって製造された円形伸長式テーブルです。円形から楕円形へと変化する独自の機構を備え、日常使いの親密な空間と、来客時の大きな場を自在に切り替えることができます。ウェグナーが掲げた「オーガニック・ファンクショナリズム」の思想を体現する代表作のひとつです。
直径120cmのコンパクトな円形は、家族や友人が自然に顔を合わせ、会話を楽しむのに理想的な形態です。内部に収納された拡張板を用いれば220cmを超えるサイズとなり、大人数での食事や特別な場に対応します。この柔軟性は、ウェグナーの「人に寄り添う家具」という理念を如実に示しています。
脚部は上から下へ優雅に細くなるテーパード形状で、軽やかさと安定性を両立しています。幕板や接合部に施された角度は、単なる構造的要素にとどまらず、彫刻的な美しさを備えており、職人技の痕跡を「見せる」デザインとして高く評価されています。
素材にはオークが一般的に使用されましたが、一部にはチーク材の個体も存在するとされます。当時のデンマーク家具における素材選択の柔軟性を物語る点でも興味深い事例です。
アンドレアス・ツック工房は、1950年代から60年代にかけてウェグナーのテーブルを中心に製作を担い、フリッツ・ヘニングセンらとともに「サレスコ」販売ネットワークを形成しました。しかし、サレスコは1968年に解散、ツック社も1972年に廃業したため、AT329はヴィンテージ市場でしか出会うことのできない希少な存在となりました。今日では、その普遍的な美と実用性から世界中のコレクターやデザイン愛好家に高く評価されています。

