AT332 Dining Table | ダイニングテーブル


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1950s
Material: Teak, Oak, Mahogany, Beech
Size: W140(closed)/ 250(extended) × D110 × H70 cm


Story

AT332ダイニングテーブルは、ハンス・J・ウェグナーがデザインし、アンドレアス・ツック社が製造した伸長式テーブルです。ウェグナーのデザイン哲学である「オーガニック・ファンクショナリズム」が色濃く反映され、木材の特性を尊重しながら、構造の純粋さを視覚的に示すデザインとなっています。

天板は中央で分割され、隠されたレール機構に沿って左右にスライドする仕組みを持ち、1枚または2枚の伸長板を追加することで、ほぼ円形に近い楕円形から長い楕円形へと優雅に変化します。この可変性によって、日常的な親密な食卓から大人数の集まりまで、幅広いシーンに対応できる柔軟性を備えています。

素材にはチークやマホガニーといった濃色の木材と、オークやビーチといった明るい木材の組み合わせが用いられました。これにより、天板と脚部が視覚的に分節され、天板が軽やかに浮いているかのような印象を与えます。これはウェグナーが意図した「構造の誠実さ」を体現した表現です。

脚部は無垢材から削り出された丸脚で、先端に向かってテーパーが施され、外側に開くスプレイドレッグの構造を持ちます。この設計は高い安定性とともに、軽快で動きのあるシルエットを生み出します。さらに伸長時でも脚は四隅に配置されるため、足元の空間を妨げない実用性が確保されています。

AT332は、後年のカール・ハンセン&サン製CH337/CH338シリーズの前身ともいえる存在です。楕円形の天板を中央で分割して伸長させるという基本的なアイデアは、ここで確立され、その後の洗練を経て代表的な作品群へと発展していきました。AT332は、ウェグナーのデザイン思想が実験と進化を重ねる過程における重要な一歩であり、ツック社の優れた職人技とともに、デンマークモダンの精神を体現する名作です。

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