Story
アクセル・ヨハネス・ウルマー(1884–1961)は、デンマーク美術史における過渡期を象徴する画家です。彼はデンマーク王立美術院で伝統的なアカデミック教育を受けながらも、20世紀初頭の芸術的潮流に積極的に触れ、自然主義からモダニズムへの架け橋となる存在でした。
1909年に訪れたパリは、彼の芸術に決定的な転換をもたらしました。セザンヌやルノワールといったポスト印象派の作品に接することで、構造性を重視する姿勢や光と色彩を通じた表現の可能性を学び、従来のアカデミックな写実主義から脱却しました。この体験は彼の作風を根本的に変え、以後の創作活動を方向付けるものとなりました。
初期作品はフレデリクスベア公園などを題材にした自然主義的風景画に代表されますが、1920年代以降は色彩や筆致に個性を宿した移行期の作品を多く残しました。晩年には単純化された形態、力強い筆致、鮮烈な色彩を特徴とするモダニズム的な作品へと到達し、時代の変化を体現する独自の表現を確立しました。
また、彼はクンストハル・シャルロッテンボーで長年にわたり作品を発表し、同時代の芸術家として確固たる地位を築きました。その一方で、死後は市場における存在感が薄れ、オークション記録にとどまる評価となっています。しかし、彼の作品はデンマークの美術が国際的なモダニズムの影響を受容する過程を示す貴重な証拠であり、再評価の余地を持つ芸術的遺産です。
About
Year:1884 – 1961
Place:Falster(ファルスター) / Copenhagen(コペンハーゲン)
Museum:記録なし(主にオークション市場で流通)
History
1884:ファルスター島トーデルプ教区牧師館にて誕生
1900年代初頭:デンマーク王立美術院で学ぶ
1909:パリ旅行、セザンヌやルノワールの作品に触れる
1911:『フレデリクスベア公園の風景』を制作
1913:クンストハル・シャルロッテンボーに出展を開始
1921:『城のある風景』『港』を制作
1920年代後半:自然主義から移行期的表現へと作風を変化させる
1936:『休む女性の肖像』を制作、1937年クンストハルで展示
1941:『肖像』を制作、後期モダニズム様式の始まり
1946:『物思いにふける女性』を制作、強い色彩と筆致を確立
1947:モノグラム「AU 47」入りの『風景画』を制作
1940年代後半〜1950年代:強いコントラストと簡素化された形態を追求
1961:死去、デンマーク美術における過渡期を代表する存在として記録される
Works
・Landscape from Frederiksberg Park | フレデリクスベア公園の風景
・View with Castle | 城のある風景
・Harbor | 港
・Portrait of a Resting Woman | 休む女性の肖像
・Portrait | 肖像
・Pensive Woman | 物思いにふける女性
・Landscape with Monogram AU 47 | 風景画
・その他、自然主義的風景画からモダニズム的肖像画に至る多数の作品