Folmer Bonnén | フォルマー・ボンネン


Story

フォルマー・ボンネン(1885-1960)は、20世紀デンマーク美術における最も複雑で物議を醸す芸術家の一人です。彼は若くしてアカデミズムに反旗を翻し、表現主義や生命力主義といった新しい潮流を取り入れ、大胆で革新的な作風でデビューしました。特に1909年の代表作『夕暮れの青春』は、強烈な色彩とエネルギーによって注目を集め、モダニズムの旗手としての地位を確立しました。

彼はまた、若手芸術家集団「デ・トレッテン」の共同創設者として、既成の芸術機関に挑戦し、デンマーク近代美術の発展に重要な役割を果たしました。教育者としても活動し、私立絵画学校を設立して後進を育成しました。弟子たちに自身の様式を押し付けるのではなく、それぞれの才能を伸ばす姿勢は高く評価されました。

技術的にも革新を追求し、カゼインを用いた新しい「デンマーク・フレスコ」技法を開発しました。彼の研究は保存技術にまで及び、芸術作品を長く後世に伝える方法を探求したことは特筆すべき点です。

しかし、ボンネンの生涯は芸術と政治が交錯する複雑なものでした。第二次世界大戦期にはナチ党に加わり、その思想を新聞活動を通じて表明しました。この政治的選択は戦後の評価に深刻な影を落とし、無罪判決を受けながらも社会的信用を失い、美術館コレクションから遠ざけられる結果となりました。

彼の遺産は、若き日の反逆的な創造性と、後年のイデオロギー的誤りとの間の緊張関係に象徴されます。初期の力強い生命力主義的作品は今日でも再評価の対象となりますが、その後の政治的選択は芸術史上の立ち位置を複雑にしています。


About

Year:1885-1960
Place:Randers(ランダース)、Copenhagen(コペンハーゲン)
Museum:―


History

1885:ランダースに生まれる
1906:コペンハーゲンの技術学校でホルガー・グレンヴォルドに学ぶ
1907:『芸術家の秋の展覧会』で公式デビュー
1909:若手集団「デ・トレッテン」を共同設立、『夕暮れの青春』を発表
1912:都市風景や静物を手がけ、生命力主義の傾向を強める
1916:パリの影響を受け、テンペラや板絵を試みる
1918:教育活動を開始、私立絵画学校を開設
1920:人物画や風景画に新しい技法を導入
1924:パリ五輪芸術競技に『綱引きをする少年たち』を出品
1930:『デンマーク・フレスコ』技法を開発、著書を刊行
1936:庭園や自然を主題とした作品を発表
1939:大作風景画を制作し、国民的芸術の方向性を打ち出す
1940:デンマーク・ナチ党に入党し政治活動に関与
1945:戦後、密告罪で収監されるが無罪となる
1946:私立絵画学校を閉鎖、活動を縮小
1950:スウェーデン滞在中に『クララ教会からの眺め』を制作
1955:晩年も依頼による肖像や風景を描き続ける
1960:コペンハーゲンで死去


Works

・Ungdom i aftensol | 夕暮れの青春
・København landskab | コペンハーゲンの風景
・Ung nøgen kvinde | 若い裸婦
・Stilleben | 静物
・Træer udsigt | 木々の眺め
・Domen i Paris | パリのドーム
・Ballerina | バレリーナ
・Pige med blomster | 少女と花の構図
・Børn i skov | 森で遊ぶ子供たち
・Ung kvinde | 若い女性
・Tovtrækkende drenge | 綱引きをする少年たち
・Pige med kat | 猫と少女の肖像
・Landskab | 風景
・Have landskab | 庭の風景
・Landskab (1939) | 風景
・Udsigt fra sommerhus i Sverige | スウェーデンの別荘からの眺め
・Udsigt fra Klarakirken | クララ教会からの眺め
・Portræt | 肖像画
・Bylandskab | 都市風景
・Naturstudie | 自然の習作

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