Story
ホルガー・J・イェンセン(1900-1966)は、デンマークの画家であり、同時にグラフィックアーティストとしても知られる人物です。彼はコペンハーゲンに生まれ、幼少期から芸術に強い関心を抱きましたが、父親の反対により一時は建築の道を志しました。その後、美術商としての活動を経て、最終的に王立デンマーク芸術アカデミーで本格的に美術を学び、画家としての道を歩み始めました。
アカデミーではヴィゴ・ブラントやエイナル・ニールセンから絵画を学び、さらにアクセル・ヨルゲンセンの指導のもと版画技術を磨きました。彼の芸術的探求は、初期のキュビスムやフォーヴィスムの影響を受けた作品から始まり、やがて表現主義的な方向へと進化していきます。特に、風景画や自画像、都市風景といったテーマを通じ、内面的な感情を強い色彩で表現するスタイルを確立しました。
グラフィックアートの分野においても、彼は木版、リトグラフ、エッチングなど多様な技法を駆使しました。作品はしばしば限られた部数のみが刷られ、完成品よりも制作過程そのものを重視する姿勢が特徴的でした。この実験的な取り組みは、素材と技術に対する飽くなき探求心を示しています。
彼はまた、1928年に芸術家グループ「デセンブリスト」を共同設立し、デンマーク美術界における活動を積極的に展開しました。晩年には教育活動に重きを置き、王立デンマーク芸術アカデミーで多くの後進を育成しました。ヘレ・トルボーやエリック・ハーゲンスなど、後に重要な役割を果たす芸術家が彼の門下から輩出されました。
その功績は作品そのものだけでなく、教育者としての影響力にも大きく見出されます。彼が育てた世代のアーティストを通じて、その思想と実験精神は今なお受け継がれています。1951年にはエッカースベルグ・メダルを受賞し、芸術家としての地位を確立しました。彼の遺産は、デンマーク美術史における重要な一章をなしています。
About
Year:1900-1966
Place:Copenhagen(コペンハーゲン)、Brittany(ブルターニュ)
Museum:Statens Museum for Kunst(デンマーク国立美術館)、Ribe Kunstmuseum(リーベ美術館)
History
1900:コペンハーゲンに生まれる
1916:中等教育を終え、大工見習いとして建築を志す
1921:王立デンマーク芸術アカデミーに入学、絵画を学ぶ
1922-1930:アクセル・ヨルゲンセンに師事し版画技術を修得
1927:芸術家秋季展、シャーロッテンボー展に出品
1928:芸術家グループ「デセンブリスト」を共同設立
1930年代:キュビスムやフォーヴィスムから影響を受けた作品を制作
1940年代:風景画や自画像において表現主義的なスタイルを確立
1950:アクアティント作品「Selvportræt」を制作(デンマーク国立美術館収蔵)
1950年代:素描「Antikke søjler」を制作(デンマーク国立美術館収蔵)
1951:エッカースベルグ・メダルを受賞
1960:アンカースケ奨学金を受ける
1960年代:王立デンマーク芸術アカデミーで教育活動に専念
1966:フランス・ブルターニュで死去
Works
・Still life with fruits | 静物画
・Landscape from Bornholm | ボーンホルム風景
・Frederiksberg Have | フレデリクスベア公園
・Self-portrait | 自画像
・Antikke søjler | 古代の柱
・Selvportræt(1950, aquatint) | 自画像
・Allé. Kirkegård | 並木道、墓地
・[uden titel] | 無題(エッチング)
・Portrait of a young man | 青年の肖像
・Interior with figure | 室内画
・Copenhagen street view | コペンハーゲン街景
・Park landscape | 公園風景
・Seated woman | 座る女性
・Harbor scene | 港の風景
・Trees by the lake | 湖畔の樹木
・Evening light | 夕景
・Garden with flowers | 花のある庭
・Mother and child | 母と子
・The artist’s studio | アトリエ
・Churchyard motif | 墓地のモチーフ