Mogens Andersen | モーゲンス・アナセン


Story

モーゲンス・アナセン(1916–2003)は、20世紀デンマークを代表する抽象画家の一人です。初期には土色を基調とした具象画を描きましたが、フランス近代主義への強い関心から、第二次世界大戦後にパリへ渡り、叙情的抽象と呼ばれるスタイルを確立しました。

彼の作品は、明るい下地の上に暗いアラベスクを重ねる力強い筆致を特徴とし、光と影の対比を通じて精神性と自然の流動性を表現しました。特にピエール・スーラージュやジャン・バゼーヌといったフランスの芸術家との交流は、彼の作風に決定的な影響を与えました。

デンマークに帰国後は、芸術家団体に積極的に参加し、公共空間に抽象芸術を導入する役割を担いました。1959年のコペンハーゲン中央図書館の装飾は大きな議論を呼びましたが、抽象芸術の社会的意義を定着させる重要な契機となりました。

さらにアナセンは、文筆家として『Modern French Painting』を著し、デンマークにフランス美術を紹介しました。また教育者としても活動し、後進の育成に尽力しました。芸術基金の会長を務めるなど制度的な側面からも文化振興に寄与しました。

その多様な活動と独自の抽象表現は、彼をデンマーク美術史における重要人物と位置づけています。今日では戦後ヨーロッパの抽象芸術や北欧モダニズムの文脈において、再評価の動きが進んでいます。


About

Year:1916–2003
Place:Copenhagen(コペンハーゲン)
Museum:Statens Museum for Kunst(コペンハーゲン)、Kunsten Museum of Modern Art Aalborg(オールボー)、Bochum Museum(ボーフム)


History

1916:コペンハーゲンに生まれる
1933:P. ロストルップ・ボイェセン画学校に入学
1935:芸術家秋季展に出品してデビュー
1939:画学校を修了し本格的に制作活動を開始
1942:芸術家グループ「Bølleblomsten」に参加
1945:戦後直後にパリへ渡航
1948:著書『Modern French Painting』を出版
1949:エッカースバーグメダルを受賞
1950:リセ・ヴァーブルクとタペストリー作品を制作
1953:芸術家団体「Grønningen」に加入
1957:コペンハーゲン中央図書館の装飾制作を開始
1959:同図書館の抽象装飾を完成し大きな議論を呼ぶ
1961:フランス各地で抽象作品を発表
1965:長期滞在していたパリから帰国
1967:著書『Around the Sources』を出版
1970:デンマーク国内で大規模な個展を開催
1973:抽象絵画の連作を発表
1976:著書『Nødigt, but still like』を出版
1977:デンマーク芸術基金の会長に就任
1980:芸術基金会長を退任
1981:ドイツ・ボーフム美術館に陶芸装飾を制作
1984:トーヴァルセンメダルを受賞
1990:セイス・スヴェイバック教会の装飾を完成
1995:晩年の回顧展が開催される
2003:コペンハーゲンで逝去


Works

・Abstract Composition | 抽象構成
・Triptykon-gul skitse | 三連作(黄色のスケッチ)
・Still Life | 静物
・Dark Arabesque | 暗いアラベスク
・Light and Shadow | 光と影
・Dynamic Lines | ダイナミックな線
・Parisian Motif | パリのモチーフ
・Blue Abstraction | 青の抽象
・Red Composition | 赤のコンポジション
・Green Structure | 緑の構成
・White Ground with Black Lines | 白地に黒の線
・Flowing Forms | 流れる形態
・Ceramic Wall Decoration | 陶芸壁画
・Bochum Decoration | ボーフム装飾作品
・Library Mural | 図書館壁画
・Sejs Svejbæk Church Decoration | セイス・スヴェイバック教会装飾
・Graphic Series | グラフィック連作
・Lithograph Composition | リトグラフ構成
・Tapestry with Lise Warburg | リセ・ヴァーブルクとのタペストリー
・Conceptual Form | コンセプチュアルな形態

PAGE TOP