Story
アクセル・サルトは20世紀デンマークを代表する芸術家であり、絵画や木版画、テキスタイル、文筆など多方面で活躍しながら、最終的に陶芸という媒体に自らの芸術哲学を託した人物です。彼の根幹をなす思想は、自然界に存在する「生命の内なる力」を表現することであり、その躍動感を粘土や釉薬に宿らせました。
若くしてパリを訪れ、ピカソやマティスと交流した経験は、彼を単なる画家からデンマーク・モダニズムを推進する知的リーダーへと変貌させました。帰国後は芸術雑誌『クリンゲン』を創刊し、モダニズム思想を広める活動を主導しました。
1920年代以降は陶芸に傾倒し、ビング&グレンダール、のちにはロイヤル・コペンハーゲンの工房で数多くの作品を制作しました。彼の代表的な表現には「フルート」「バディング」「スプラウティング」と呼ばれる三様式があり、それぞれ自然界の成長や変容を造形的に具現化しています。
特に釉薬の探究は顕著で、ソルファタラ釉やソン釉など独自の表情を持つ技法を生み出しました。これらの実験は、陶芸を機能主義的なデザインの枠を超えたファインアートへと引き上げる革新的な試みでした。
晩年まで旺盛な創作活動を続けたサルトの作品は、ヴィクトリア&アルバート博物館やメトロポリタン美術館をはじめ、世界の主要美術館に所蔵されており、現代に至るまで高い評価を受け続けています。
About
Year: 1889–1961
Place: Copenhagen(コペンハーゲン)
Manufacturer: Royal Copenhagen(ロイヤル・コペンハーゲン)、Bing & Grøndahl(ビング&グレンダール)
History
1889: コペンハーゲンに生まれる
1909–1914: デンマーク王立美術アカデミーで絵画を学ぶ
1916: パリを訪れ、ピカソやマティスらと交流
1917–1920: 芸術雑誌『クリンゲン』を創刊・編集
1923: ビング&グレンダールで陶磁器デザインを開始
1925: パリ万国博覧会で銀メダルを受賞
1933–1961: ロイヤル・コペンハーゲンのデザイナーとして活動
1937: パリ万国博覧会でグランプリを受賞
1938: エッカースベルク・メダルを受賞
1938: 著書『Det brændende Nu(燃えるような今)』を出版
1951: ミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞
1959: プリンス・エウゲン・メダルを受賞
1961: コペンハーゲンで死去
Works
・Fluted style vase | フルート様式の花器
・Budding style vase | バディング様式の花器
・Sprouting style vase | スプラウティング様式の花器
・Woodcuts and lithographs | 木版画・リトグラフ
・Book illustrations | 書籍挿絵
・Children’s book illustrations | 児童書挿絵
・Textile designs for L.F. Foght | テキスタイルデザイン
・Ceramic tableware for Royal Copenhagen | 食器デザイン
・Unique sculptural stoneware vessels | 彫刻的ストーンウェア作品
・Poetry collections | 詩集の挿絵と装丁