FD533 Occasional Table | オケージョナルテーブル


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1958
Material: Teak
Size: W 71 × D 51 × H 54.5 cm


Story

FD533オケージョナルテーブルは、1958年にフィン・ユールがデザインし、France & Daverkosen(のちのFrance & Son)によって製造されたサイドテーブルです。デンマーク・モダンが国際市場へ大規模に展開されていく過程において、工業化と芸術的精神を融合させた象徴的な作品のひとつと位置づけられています。

デザインの特徴は、直線的な角張った脚部と、天板の周囲に施された持ち上げられた縁です。縁は機能的に物の落下を防ぐ役割を果たすと同時に、ユール特有の「浮遊感」を造形的に表現しています。これは彼の初期のキャビネットメーカー作品に見られる有機的な分離構造と通じており、工業製品においても彫刻的美学を維持するための重要な要素となっています。

このモデルは500シリーズの一環として展開され、FD533は唯一棚板を備えた高めの仕様でした。高さ54.5cmという寸法は、ソファやアームチェアの肘掛けに自然に合うよう最適化され、実用性と快適さを両立しています。また棚板により雑誌や書籍を置く機能が加わり、ミッドセンチュリー期の生活空間に即した設計意図が示されています。

素材にはチークが用いられ、強度が必要な縁や脚部には無垢材、広い天板や棚板には突き板が使われました。これは輸出を前提としたFrance & Sonの工業生産体制に即した合理的な戦略であり、耐久性とコスト効率を兼ね備えています。また、ノックダウン構造の採用により輸送効率を高め、特にアメリカ市場での成功に貢献しました。

現代では、House of Finn Juhl(OneCollection)がこのデザインを継承し、オークやウォールナットを素材に用いて復刻しています。再生産にあたってはデンマーク国内の工房に加え、日本の指物技術も取り入れられ、複雑な接合や繊細なディテールが忠実に再現されています。FD533は、ユールの芸術的哲学と国際輸出の歴史、そして現代の職人技術の継承が一体化した、時代を超える価値を持つ作品といえます。

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