FD540 Dining Table | ダイニングテーブル


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak (solid)
Size: W186 × D100 × H72.5 cm(最大拡張時 W285 cm)


Story

FD540 ダイニングテーブルは、1950年代中期にフィン・ユールが設計し、France & Daverkosen(後のFrance & Son)によって製造された拡張式のチーク材ダイニングテーブルです。この作品は、ユールが工房職人との一点物の協働から、工業化された家具製造へと転じた転換期に位置づけられる重要なモデルです。

テーブルの最大の特徴は、天板両端にわずかに突き出した「彫刻的なリップ」と呼ばれる意匠です。この形状は、単なる装飾ではなく、拡張リーフを操作するための人間工学的ハンドルとして機能します。有機的な曲線美と機能性が融合し、ユールのデザイン哲学を工業製品に応用した好例となっています。

拡張機構は自己格納式リーフを採用しており、内部に収納された2枚のリーフを取り出すことで、最大12名の着席に対応可能です。非拡張時は約186cmの長さで8名を収容でき、リーフ追加により最大約285cmまで拡張します。この柔軟な仕様は、アメリカ市場など輸出需要を強く意識した設計を示しています。

素材にはソリッドチーク材が用いられ、堅牢性と経年変化による美しい風合いが特徴です。ベニヤ材が主流であった当時に無垢材を採用した点は、France & Sonの高度なチーク加工技術の成果でもあります。1953年に導入されたタングステンカーバイド鋸により、大規模な工業生産が可能となったことが、このテーブルの量産を支えました。

FD540は現在、House of Finn Juhl による復刻ラインナップには含まれておらず、オリジナル品のみが存在します。そのため、ユールが工業デザインに適応した時代を象徴する特異な作品として、今日も国際的に高く評価されています。

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