About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1956
Material: Teak, Brass
Size: W 49 × D 55 × H 77 × SH 45 cm
Story
FD134 ブーメランチェアは、ピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード=ニールセンのデザイン哲学を体現する作品です。二人は、デンマークの伝統的な職人技を継承しつつ、輸出と大量生産に適合する合理的な工業デザインを追求しました。その中でFD134は、軽快なプロポーションと分解可能な構造を両立させ、工業化時代にふさわしい家具として位置づけられています。
この椅子の特徴的な「ブーメラン型」フレームは、座面と背面を包み込むような曲線を描き、名称の由来となっています。座面はフローティング・シート構造を採用しており、視覚的な軽やかさだけでなく、快適性と耐久性を両立させる設計が施されています。
製造を担ったFrance & Daverkosen(のちのFrance & Son)は、チーク材を工業的に加工する先駆者でした。チークの堅牢性と経年による美しさは輸出市場で高く評価され、この素材を薄く削り出す高度な木工技術と、真鍮による接合強化がFD134に生かされています。
また、この椅子はノックダウン(KD)構造を採用し、輸送や組み立てを効率化しました。真鍮パーツは装飾的効果にとどまらず、繰り返しの分解と再組み立てに耐える強度を確保する役割を果たしています。この構造こそが、同社が国際市場で成功を収める基盤となりました。
FD134は生産期間が比較的短く、数量も限定的であったため、現在では稀少な存在として扱われています。しかし、その合理性と美学の融合は今も高く評価され、ヴィッツ&モルガードの代表作のひとつとして語り継がれています。