About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィット & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1954
Material: Teak, Brass, Upholstery, Springs
Size: W 68 × D 72 × H 76 × SH 42 cm
Story
FD135 ブーメラン・アームチェアは、1954年に発表されたピーター・ヴィットとオルラ・モルガード=ニールセンによる代表的なラウンジチェアです。直線的で重厚な家具が主流であった時代に、ブーメランのように滑らかな曲線を描くフレームと軽快なプロポーションを備えたこの椅子は、デンマーク・モダニズムの革新的な方向性を象徴しました。
フレームは無垢のチーク材で構成され、その温かみのある質感と耐久性がデザインの核を成しています。脚部には磨かれた真鍮が採用され、チークとのコントラストによって視覚的な軽さと洗練を生み出しています。座面にはデンマーク製の高品質なコイルスプリングが組み込まれ、見た目の軽快さに反して長時間の快適性が確保されています。
アームレストはカンチレバー構造で、支えとなる余分な部材を省きつつ強度を維持しています。この構造的明快さは、機能性と美観を両立させるHvidt & Mølgaardの設計哲学をよく示しています。
「コンパニオン・アームチェア」と呼ばれることもあるこの椅子は、同時期にデザインされたMinervaソファやPinwheelサイドテーブルといった家具と調和し、統一感のあるリビングルーム・システムを形成することを意図していました。単体の家具としての美しさに加え、輸出戦略に沿った空間全体の調和を担う役割を持っていたのです。
FD135は、France & Daverkosenから始まり、France & Son、さらにCADOへと受け継がれ、1970年代まで製造が続けられました。工房の経営体制が変わっても生産が続いた事実は、このデザインの普遍的な価値と市場での支持を物語っています。