FD139 Chair | チェア


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(フランス&ダヴァーコセン) / France & Son(フランス&サン)
Year: 1950s
Material: Teak, Beech, Oak, Rattan
Size: W 48 × D 52 × H 80 × SH 45 cm


Story

FD139チェアは、ピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード=ニールセンによる協働の中でも、輸出戦略を象徴する作品の一つです。彼らは1944年に事務所を設立して以降、工業化時代のデンマーク家具に革新的なアプローチを持ち込みました。その背景には、伝統的な職人技を継承しながらも、国際市場を視野に入れた効率的な製造方法の追求がありました。

このチェアの最も大きな特徴は、分解可能なノックダウン構造を採用している点です。椅子をフラットパックで輸送できる仕組みは、アメリカをはじめとする海外市場への輸出に適しており、輸送コストの削減と供給の安定化を実現しました。構造的に露出した金具や接合部は、単なる実用性にとどまらず、デザイン上の誠実さを表す意匠として統合されました。

素材には主にチークやブナ材が使用され、軽量でありながら十分な強度を持たせています。また、座面や背もたれには籐(ラタン)の手編みが用いられ、工業化された木工と伝統的なクラフトが融合しています。ラタンは柔軟性と通気性を備え、椅子全体に温かみのある質感を加えました。

製造はフランス&ダヴァーコセン、のちのフランス&サンによって行われました。同社はデンマーク家具の大量生産を先導した企業であり、FD139の設計思想は同社の商業戦略と完全に一致していました。その後、ポール・カドヴィウス率いるCADOに継承され、製品の生産と流通はさらに拡大しました。

FD139は、工業的合理性と職人技術を両立させた稀有な成功例であり、デンマーク・モダンが世界に広がる礎を築いた重要な一脚です。その姿は、輸出を前提とした合理性を備えながらも、座る人に快適さと美的体験を与えるデザイン哲学を体現しています。

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