FD575 Long Coffee Table | ロングコーヒーテーブル


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ホヴィット&オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(フランス&ダヴァーコセン) / France & Son(フランス&サン)
Year: 1950s
Material: Teak, Brass
Size: W150 × D55 × H50 cm


Story

FD575 ロングコーヒーテーブルは、1950年代のデンマーク・モダンにおいて工業化時代の合理主義を象徴する家具のひとつです。デザインを手掛けたピーター・ホヴィットとオルラ・モルガード=ニールセンは、輸出を前提とした大量生産と輸送効率を念頭に置きながらも、美的完成度を損なわない設計を実現しました。

このテーブルの最大の特徴は、厚みのあるチーク無垢材をナイフエッジ加工で削り出した天板にあります。鋭く傾斜した縁は、視覚的な軽さと浮遊感を生み出し、モダニズムの理念である「軽快さ」と「機能美」を体現しています。天板と脚部は真鍮製の球体ジョイントによって結合され、強度と分解可能性を両立する高度なノックダウン構造が採用されました。これにより、分解して輸送が可能となり、国際市場における競争力が確保されています。

脚部は彫刻的な曲線を描き、下部にはボウタイ型ストレッチャーが組み込まれています。このディテールは構造補強の役割を果たすと同時に、デザインの意匠性を高める要素として機能しています。単なる工業製品ではなく、職人技と機械加工の融合を体現した作品といえるでしょう。

素材として用いられたチーク材は、当時のデンマーク家具において最重要の輸出資源でした。しかし加工の難しさから大量生産は困難でした。France & Daverkosen社が1953年に導入したタングステン・カーバイド合金鋸により、精密なナイフエッジや複雑な曲線加工が可能となり、FD575の量産を支える基盤となりました。この技術革新は、デンマーク家具産業全体を輸出市場へと押し上げる転換点でもありました。

FD575は、デザイナーと製造元の協働によって生まれた合理主義的家具の典型例です。優雅な外観、輸送に適した構造、そして工業化を可能にした技術革新が三位一体となり、デンマーク・モダンを世界的に普及させた重要な役割を果たしました。今日に至るまで、その軽やかで洗練されたデザインは高く評価され続けています。

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