FD580 Low Coffee Table | ローコーヒーテーブル


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィット & オーラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Rattan
Size: W 101 × D 61 × H 33 cm


Story

FD580 ローコーヒーテーブルは、戦後のデンマーク家具デザインが工業化と輸出戦略を両立させた象徴的な作品です。デザイナーのピーター・ヴィットとオーラ・モルガード=ニールセンは、従来の職人技に基づく伝統的な家具づくりを出発点としながらも、国際市場に適応するための合理的かつ経済的な構造を追求しました。

FD580の大きな特徴は、ノックダウン構造(分解・組み立て可能なシステム)を採用している点にあります。これにより、輸送コストの削減と効率的な梱包が可能となり、特にアメリカ市場での需要に対応することができました。こうした輸送と流通を前提とした設計思想は、家具を単なる生活用品から国際的なプロダクトへと押し上げる要因となりました。

天板には堅牢で美しいチーク材が用いられ、経年とともに深みのある色合いを帯びていきます。フレームと脚部は細身でシンプルながらも安定感があり、軽快で開放的なデザインを実現しています。また、下部には籐(ラタン)製の棚が設けられており、軽量化に寄与するとともに、光を透過する素材感が全体に軽やかさをもたらしています。

この籐の棚は雑誌や小物の収納に便利であると同時に、木材フレームと金属サポートによる合理的な補強が施され、大量生産にも耐えうる強度を確保しています。伝統的な素材と工業的な加工技術の融合が、視覚的にも機能的にも調和したデザインを生み出しているのです。

FD580は、France & Daverkosen(のちのFrance & Son、さらにCADO)による高品質な製造体制と結びつくことで、世界規模で展開されました。単なるリビング用のテーブルにとどまらず、戦後デンマーク家具が国際市場で成功するための設計哲学と物流戦略を体現した重要な遺産といえます。

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