FD206 Companion Armchair | コンパニオンアームチェア(籐バック)


About

Designer: Arne Vodder(アルネ・ヴォダー)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Cane (Rattan)
Size: W57 × D55 × H79 × SH45 cm


Story

FD206 Companion Armchairは、アルネ・ヴォダーが1950年代にデザインし、フランス&ダヴァーコーセン(後のフランス&サン)によって製造されたダイニングアームチェアです。ヴォダーは、師フィン・ユールから受けた有機的造形への感性を基盤としつつ、工業生産と職人技術を融合させることで独自のデザイン哲学を築き上げました。

最大の特徴は、籐(ラタン)を用いた背もたれが旋回する独自の機構にあります。着座時の姿勢変化に応じて背もたれがわずかに動くため、従来の固定背もたれ椅子に比べて腰背部への負担が軽減され、長時間の使用でも高い快適性を維持します。このエルゴノミクス的な発想は、1950年代当時としては極めて革新的なものでした。

フレームには良質なチーク無垢材が使用され、耐久性と安定性を確保しています。接合には工業生産に適したダボ接合が採用され、精度と強度の両立を実現しました。籐の軽やかな透過性は、堅牢な木部と対比することで全体に開放的な印象を与え、北欧デザインらしい軽快さを強調しています。

「Companion」という名称には、同時期にデザインされたアームレスのFD205チェアと対をなす存在であること、そして使用者に寄り添うように快適性を提供するという意味が込められていると考えられます。実際、両モデルはセットで販売されることが多く、空間に統一感をもたらしました。

FD206は1950年代の輸出ブーム期にアメリカ市場にも投入され、Danish Modernを代表する輸出家具のひとつとして高い評価を得ました。John Stuart Inc.などを通じて流通した製品には輸入業者のラベルが貼付されており、今日の真贋鑑定における重要な手がかりとなっています。

この椅子は、工業化時代のデンマーク家具における人間工学的探求の象徴であり、ヴォダーとFrance & Daverkosenの協業を物語る名作として位置づけられます。

 

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