About
Designer: Inger Klingenberg(インガー・クリンゲンベルグ)、Ross Littell(ロス・リテル)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Søn)
Year: 1960s
Material: Teak, Veneer, Solid wood
Size: W120 × D120 × H72 cm
Story
FD543 Round Dining Tableは、1960年代にデンマークの工房 <a href=”https://denmark-design.com/france-daverkosen/”>France & Søn</a> によって製造された円形のダイニングテーブルです。デザインはインガー・クリンゲンベルグとロス・リテルによる協働で、北欧的な素材美とアメリカ的な機能主義を融合させた国際的な作品として位置づけられます。
このテーブルは、拡張機構を持たない固定式の円形構造で設計され、視覚的な軽快さと空間効率を両立しています。脚部は中央に集中させる設計が採用されており、使用者の足元を広く確保しつつ、対等な会話を促進する非階層的な配置を可能にしました。
素材にはチーク無垢材と突き板が組み合わせて用いられ、輸出を前提とした安定性と耐久性が確保されています。特に大径の天板は突き板を高安定性のコア材に貼り付ける構造が推定され、湿度や輸送環境に強い仕様を実現しました。また脚部と天板の接合には、工業的に加工された金属フィッティングが用いられたと考えられ、分解可能なKD(ノックダウン)構造が輸送効率を高めています。
デザイン面では、リテルがアメリカで培った機能主義的なアプローチが反映され、装飾を排した純粋な幾何学性が際立ちます。一方で、クリンゲンベルグは実務的なインテリアデザイナーとして、北欧の生活空間に即した温かみと居住性を加えました。この二つの設計哲学の融合により、FD543は「トランスアトランティック・モダニズム」を体現する代表的な作品となっています。
さらに、このモデルは同時期に設計された矩形拡張式のModel 452テーブルと並び、空間ニーズに応じた包括的なダイニングシステムを形成していました。結果として、FD543は単なる家具ではなく、デンマーク・モダンデザインが工業生産と国際流通を通じて新たな段階に進化したことを示す象徴的な存在として評価されます。