About
Designer: Inger Klingenberg(インガー・クリンゲンベルグ)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1960
Material: Teak
Size: W143–203 × D87 × H70 cm
Story
FD542 ダイニングテーブルは、1960年頃にデンマークのデザイナーであるインガー・クリンゲンベルグによって設計され、France & Sønによって製造された拡張式の長方形ダイニングテーブルです。無垢材チークを使用しながらも、工業的な生産技術を取り入れることで、質の高さと機能性を兼ね備えたデザインとなっています。
このテーブルの大きな特徴は、拡張機構を備えている点です。標準サイズでは4人掛けに適しており、拡張することで最大8人までの使用に対応できます。都市部の住宅事情を考慮し、コンパクトさと柔軟な拡張性を両立させた構造は、戦後の中流階級が求めた新しいライフスタイルに応えるものでした。
また、FD542は単独の家具としてだけでなく、クリンゲンベルグがデザインしたダイニングチェアや他のシリーズ家具と統一感を持って設計されており、総合的なダイニングスイートの一部として提案されていました。この一貫性は、France & Sønが国際市場に向けて強く打ち出した「セット販売」の戦略を象徴しています。
デザインの背景には、クリンゲンベルグが夫であるアメリカ人デザイナー、ロス・リッテルと共有した環大西洋的なデザイン哲学も影響しています。リッテルが持ち込んだ幾何学的で機能主義的な発想と、クリンゲンベルグ自身が培ったデンマーク的な素材感覚が融合し、FD542の構造や意匠に表れています。
さらに、France & Sønが誇るチーク材加工技術により、堅牢で耐久性に優れた無垢材の使用が可能となり、このテーブルは長寿命かつ普遍的な価値を持つ家具として高く評価されました。工業化と職人技の融合を体現するFD542は、デンマーク・モダンの国際的成功を象徴する一脚といえます。