About
Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1966
Material: Oak, Teak, Walnut, Rosewood, Paper Cord, Leather
Size: W56 × D54 × H78 × SH44 × AH71 cm
Story
Model 64 Armchairは、1966年にニールス・オットー・モラーが設計し、J.L. モラー社によって製造された作品です。デンマーク家具黄金期の成熟期に誕生したこの椅子は、モラーが追求した職人技とモダニズムの融合を象徴する代表的な作品です。彼は単なるデザイナーではなく、熟練したキャビネットメーカーでもあり、設計から製造までの一貫した管理体制のもとで、極めて精緻な品質を実現しました。
モデル64は、モラーが1950年代に確立した椅子の造形言語をさらに洗練させたもので、視覚的な軽やかさと構造的な強度を両立しています。特に背からアーム、後脚へと続く連続的なカーブは、木材の繊維方向や力の流れを緻密に計算した結果生まれたものであり、有機的なフォルムの中に高度な技術的理性が潜んでいます。
座面にはペーパーコードまたはレザーが用いられ、どちらも人間工学に基づいた快適性を備えています。ペーパーコードは約130メートルにも及ぶ1本のコードを手作業で編み上げる伝統的手法が用いられ、結び目のない一体的な張力が長期的な耐久性を保証します。木部の仕上げはオイル、ソープ、ホワイトオイルなどが選択可能で、時間とともに自然な経年変化を楽しむことができます。
また、J.L. モラー社は早くからCNC加工を導入し、伝統的な手仕事と精密機械加工を融合させることで、一貫した高品質を維持しました。最終的な研磨や組み立ては今なお職人の手で行われ、手触りと仕上がりの繊細さにおいて他の追随を許しません。
このようにModel 64は、ミニマルな造形美の背後に精緻な構造理解と哲学的職人精神を宿し、現代においても「永続的に使われる椅子」として国際的に高く評価されています。創業から三世代にわたって続く家族経営のもとで、現在もオーフスの自社工房で製造が続けられています。