Model 78 Dining Chair | ダイニングチェア


About

Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1962
Material: Teak, Oak, Walnut, Paper Cord
Size: W48 × D52 × H80 × SH44.9 cm


Story

Model 78 Dining Chairは、デンマークのデザイナー兼キャビネットメーカーであるニールス・オットー・モラーによって1962年に設計され、J.L. モラー社で製造されました。この椅子は、シンプルで流れるような造形美と、高度な職人技を融合させた典型的なデンマーク・モダンデザインの象徴的存在です。

背面から後脚にかけての滑らかなラインは、無垢材を削り出すことで実現されており、接合部の存在を感じさせない一体感を持っています。視覚的な軽やかさと構造的強度を両立し、素材そのものの誠実な美しさを表現しています。湾曲した背もたれは背中にやさしく沿うように設計され、長時間の着座でも快適性が保たれます。

座面には、J.L. モラー社の象徴的な技法であるペーパーコードの手織りが採用されています。1脚につき約129メートルの連続した紙紐を手作業で編み込むことで、均一な張力と高い耐久性を実現しています。この織り座は使用を重ねるほどに体に馴染み、経年変化による風合いの深まりが楽しめます。

モラーが創業したJ.L. モラー社は、組立ラインを導入せず、熟練職人の手作業による生産を維持してきました。この姿勢は「品質に妥協しない」という創業者の哲学を現代まで受け継ぐものであり、Model 78にもその精神が息づいています。無垢材の質感、接合部の精度、手磨きによる最終仕上げのいずれも、工芸的精度の高さを物語ります。

デザイン面では、装飾を排し、構造そのものを美として昇華する機能主義的なアプローチが際立っています。軽量で取り回しやすいサイズ感と、空間に圧迫感を与えない造形は、住宅からレストランまで幅広いシーンに調和します。60年以上を経た今なお製造が続くこの椅子は、時代に左右されない「タイムレスデザイン(Timeless Design)」の典型といえます。

Model 78は単なるダイニングチェアではなく、デンマーク家具が追求した「誠実な素材使いと人間中心の設計理念」を体現する存在です。その静かな佇まいの中に、機能と美の統合というデンマーク・モダンの核心が宿っています。

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