About
Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1976
Material: Oak / Beech / Teak / Paper cord / Leather
Size: W50 × D50 × H78 × SH44 cm
Story
Model 84 ダイニングチェアは、ニールス・オットー・モラーが追求した「構造美と簡素性の融合」を体現した作品です。彼は1944年に自身の工房 <a href=”https://denmark-design.com/jl-moller/”>J.L. Møller Møbelfabrik</a> をオーフスに設立し、デザインと製造を一体化させることで、純粋な職人哲学を実現しました。Model 84は、その長い創作活動の中でも特に完成度の高い椅子として知られています。
設計年代については、1954年と1976年の二つの説が存在します。初期のスケッチや構想は1950年代半ばに遡るとされますが、正式な製品化は1976年と考えられています。この椅子は、モラーの成熟した時代に登場した作品であり、同社がデンマーク家具賞を受賞した時期とも重なります。伝統的な製法と高度な加工技術が融合したこの時期のモラー作品は、国際的にも高い評価を受けました。
背もたれの緩やかな曲線は、木材の一体感を保ちながら身体を支えるよう設計されています。シンプルでありながら、人間工学的に優れた構造を持つ点が、Model 84の魅力の中心です。無垢材による構造体は堅牢で、接合部には伝統的なホゾ構造が用いられています。見た目の軽快さとは裏腹に、長期間の使用にも耐える安定感を備えています。
座面にはデンマーク製ペーパーコードが採用され、手作業で編み込まれています。この素材は柔軟性と通気性を持ち、使用を重ねることで自然な艶と経年変化が現れます。加えて、革張りやファブリック仕様も用意されており、住宅から商業空間まで幅広く対応できる設計になっています。
J.L.モラー社は現在も家族経営を続けており、三代目にあたるキルステン・アン・モラーのもとで製造が継続されています。創業者の哲学を受け継ぎながら、現代のニーズに合わせた改良を加える姿勢が見られます。Model 84はその象徴ともいえる存在であり、職人技とデザインの調和が時代を超えて継承されていることを証明しています。