Model 408 Chair | チェア


About

Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1962
Material: Teak / Oak / Rosewood, Danish paper cord
Size: W48 × D50 × H83 × SH46 cm


Story

Model 408 チェアは、ニールス・オットー・モラーが1962年に設計し、彼が率いた J.L. モラー社の成長期を象徴する作品です。創業者モラーが追求した「時代や流行に左右されない普遍的な美しさ」を体現し、機能性と構造的完全性を高次元で融合させたデザインとして知られています。

このモデルは、細身でミニマルなラインを持ちながらも、背もたれの緩やかな曲線が人間工学的に設計され、着座時の快適性を確保しています。背板と後脚の一体成形構造は、木材の強度を最大限に活かし、長期使用にも耐える堅牢性を実現しています。

素材にはチークやオークといった無垢の硬材が用いられ、職人による精密なほぞ継ぎによって構築されています。座面にはデンマーク・ペーパーコードが手作業で編み込まれ、座り心地の柔らかさと通気性を兼ね備えています。この伝統的な手編み技法は、20世紀中盤のデンマーク家具の象徴的ディテールであり、工業化以前のクラフトマンシップを現代的な製造技術の中で再現したものです。

Model 408 が登場した1960年代初頭、J.L. モラー社はオーフス近郊のホイビェルクに新工場を開設し、国際市場への輸出体制を確立した時期でした。408はまさにその転換期に発表された旗艦モデルとして、ドイツやアメリカ、日本市場で高く評価され、同社の名声を確立する重要な役割を果たしました。

また、デザインの帰属についてはしばしば混同が見られますが、Model 408 は創業者ニールス・オットー・モラーによる設計であり、息子のヨルゲン・ヘンリック・モラーによる後年の400番台シリーズ(401, 404など)とは明確に区別されます。この世代を超えたデザインの連続性は、モラー家が維持してきたクラフトマンシップの哲学そのものを体現しています。

半世紀以上を経た現在でも、多くの Model 408 チェアが構造的に健全な状態で使用されていることは、その設計と製造技術の優秀さを証明するものです。シンプルでありながら緊張感のあるライン、そして無垢材の温かみを併せ持つこの椅子は、まさにデンマーク・モダンの理想を凝縮した永続的な名作です。

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